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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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出逢い-6

「す、すまん。つい……」
「いいよ。本当の事だから」

 大体、こんな小さな島に、プライバシーなんて無意味な言葉なんだ。
 僕の母が島を出ていったのは半年前。父に理由を訊いても教えてくれないけど、多分、島に嫌気がさしたんだろう。父も僕も、母のことは誰にも話して無いけれど、数日後には島中に知れ渡っていた。
 母は本土の人だった。青い海と空、素晴らしい自然の景観。外から見える島は確かに美しいけど、そこに住む人達は、島の見た目とはまったく異質だ。
 とても閉鎖的で内向きで、余所者を徹底的に嫌う。だから本土から来た母は、僕等と別離しても島から離れたくなったんだろう。

「よし!しまいまで読んだ」
「じゃあ、出かけようぜ!」
「そうだね。岬に行って、貝でも穫(と)りにいくか」

 母からの連絡は一度もない。でも僕は、悲観なんてしてない。母の気持ちは充分解るし、いずれ、僕も本土へ渡ったら島に戻らないと思う──唯、父は悲しむだろうけど。

「さすがに暑いな……」
「海に潜りゃ、少しは涼しくなるさ」

 海人と僕は、日射のきつい路地を海に向かって下っていく。お互いがシュノーケルに網、そして銛を手にして。

「えっ!」

 もう少しで島を周回する大きな道路に出ると思った時、脇の路地から、いきなり自転車が飛び出して来た。

「おっと!」
「きゃあ!」

 僕等はギリギリに避けると、自転車はあっけなく横転してしまった。

「いったあ……」

 自転車の持ち主は真中美咲。僕等の同級生の一人だった。

「おい、美咲。大丈夫か?」

 海人はすぐさま、倒れた自転車を起こしてやって美咲に手を差しのべた。僕はその間、彼女の格好に見入っていた。
 僕と海人、そして美咲ともう一人、渚は同じ名字のためか、学校じゃ別々のクラス。でも、通う連絡船は一緒なので、制服姿の美咲は知っている。
 短いスカートに、肩まで出したぴったりのシャツ、茶に染まった髪。昔から地味な印象しかなかったのに、夏休みの間でずいぶんな変わり様だった。

「謝れよ!」
「あ、謝れって、お前……」
「お前等のせいで、服が汚れたんだぞ!」

 もやもやとしたものが、心に涌き上がって来る。服と同様、彼女のあしざまな罵りが僕には信じられない。

「美咲、お前いい加減に……」
「もういいよ」

 僕は、海人を止めて美咲を見る。むき出しの敵意がこっちを向いていた。

「お、おい拓海……」
「ごめんなさい。これでいいか?」

 止める海人を無視して、僕は美咲に頭を下げた。
 嫌でたまらない、早く、この場から離れたい思いでいっぱいだった。


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