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遮断
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遮断-1

人間は必要ないと判断した音は脳が遮断し、聞こえなくなるらしい。例えば血液の流れる音は聞こえない。
 
そんなことできるならこの騒音を遮断してくれよ、と俺は思った。俺には必要ない音だ。しかしそんなことは不可能だと分かっている。
夜中だというのに隣の部屋は若者が騒いでいて眠れない。明日も学校なのに。俺は壁の薄いアパートを選んだことを悔やんだ。
なかなか静かにならない。俺は心の底から思った。この騒音は俺の意識から消えてくれ!
隣の部屋は急に静かになった。何かあったのだろうか。まさか本当に遮断したのか?馬鹿らしい、非現実的だ。
隣から音は漏れてこなくなったため部屋は静かになり、俺は微睡みはじめた。
 
静かになったのも束の間、けたたましいバイクの音が俺の浅い眠りを妨げた。
この辺は住宅街からやや離れたところのため、向こうも気にせず走っているのだろう。バイクは一台かと思いきや、次々とやってくる。勘弁してくれ、もう眠りたいのに…
目を瞑って、また念じた。消えろ、消えろ、消えろ…
バイクは通り過ぎたのだろうか。外は水をうったように静かになった。その静寂の中、俺は眠りに堕ちた。
 
朝。俺は寝不足による頭痛を我慢しながら大学へと向かった。
「これから学校?」
見慣れた顔の女。学科の同じキョウコだ。
「お前の声は頭に響く。勘弁してくれ」
キョウコのキンキンに高い声は頭に響く。頭痛が悪化しそうだ。
「ちょっと!それどういうことよ!」
キョウコがキャンキャン吠えはじめた。俺の頭痛は限界まで悪化する。頼むから黙ってくれ!
心の声が通じたのか、キョウコは黙った。俺はキョウコの方を向く。
キョウコはこちらを向いて口をパクパクさせている。
頭が真っ白になった。まさか…俺が遮断したのか?戻そうとしてもキョウコの声は聞こえない。
昨日の騒音も俺が?俺の頭は混乱した。もう人の騒ぐ音も聞こえない、バイクの音も聞こえない…好きな人の声も…
目の前のキョウコが俺を不思議そうな顔で見つめている。俺が反応しないせいだろう。こいつの声が聞こえないなんて…
俺は怖くなって走りだした。行き先は考えてなかったが、留まってはいられなかった。
狭い路地を走り、とにかく前に進んだ。これは夢だ、きっと悪い夢だ、自分に言い聞かせて走る。
 
なにかがぶつかる音がして突然体が宙に浮いた。
目の前には――バイク。
そういえばバイクの音は聞こえないんだった…俺は薄れゆく意識の中で思った。
 
END


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