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ニンゲンシッキャク
【二次創作 その他小説】

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ニンゲンシッキャク-11

「まだ、死にたくないよ……」
病院のベッドで一生寝て過ごせば、この短い生涯を少しは長らえる事も出来るかもしれない。けれども、わたしはそんな生き方なら同級生と一緒に少しでも普通の高校生でいたい。そう思って、周囲の反対を押し切って高校に入学した。わたしを解ってくれたのは、父と上野先生と前進先生だけだった。
「もう少しだけ、この命が保てればいい」
そして、いつの日か誰かに「明日、地球が無くなるとしたら」と訊かれたら。「普段通り高校に行って、家に帰って寝ます」って、答えたい。ただ、それだけなんです。
「もう少し」

 そう言ってから、わたしは瞼を閉じた。





「代替案」
     セキ ハジメ



 オルタナティヴ、って知っていますか。
解りやすく言いましょうか。
「ここに俺がいなくとも、世界は変わらない」
例えば、俺が関一ではなかったとしよう。けれど、そうしたら代わりの関一がいて、滞り無く未来に向かって時間は進むだけだ。

 これは校舎裏の女。定番の場所で、何を言い出すかと思えば。下手な学園ドラマの見過ぎだろう。名前? そうだな、覚えておく価値も必要も無い。
「付き合って下さい」
「なぜですか」
「え……?」
「理由を言えないなら、無かったことにしよう」
「な、何なのぉッ!」
見た目はいいが、それだけだった。次の日、あっという間に噂は広まったが聞くのも面倒だった。俺は休み時間中、ずっと狸寝入りを続けていた。

 これは去年、同じクラスだった女。名前? 忘れたね。
「好きです」
「だから?」
「付き合って」
「なぜ?」
席がたまたま隣だったからって、勘違いするな。

 女はつまらない。だから? なぜ? と言えば、皆が口を閉じる。それといった理由も無いくせに、馬鹿馬鹿しい。本当にくだらない。しまいには、運命だと言い出す女。狂っている。だが、今日は違った。相手はバスケ部の後輩だった。互いに、一言も交わした事は無い。部室にいきなり乗り込んで来たと思えば、いきなり告白と面倒な女だ。
「関先輩が、好きだから」
「君の好き、というのはどういったレベルなんだい? 友人以上、親兄弟未満? そして、本当にそれは好きという感情なのか」
「親以上、好きです」
「フン、俺の事を何も知らないのに?」
「これから知っていけばいいと思います」
お前、無駄に熱過ぎる。これは、熱血漫画の世界じゃない。スポ魂少女は、大人しくバスケ一筋でいなさい。
「俺に何も期待はしないで欲しいね、俺と君は赤の他人なんだ」
「先輩は、何を期待しているんですか?」
「……何も」
期待? 期待? 期待? 期待? 期待? しているとしたら、お前がここから一刻も早く出て行ってくれる事だろう。
「違います、先輩は何か答えて欲しいことがあるんです」
「君はさ、俺が関一だと思っているだろう? なら、例えば俺……関一が最初からいなかったら。君は違った誰かを好きになるだろうね、そして上手くいけばその誰かと交際するかもしれないな。その後、結婚するかもしれない。子供が出来るかもしれない。その相手が、俺である必要性がどこにある? その上、俺は君の事が好きでは無かったら?」
「……先輩、おかしいよ」
「なら、俺が仲間内で遊びに行くとしよう。そこで、俺が気の利いた軽いジョークでも言ったとする。けれども、そこに俺がいなかったら代わりの誰かがそれに相応する事を言う様になっているものだ」
ドアの前まで、ゆっくりと追い詰めていく。そのまま、利き腕で思い切りドアを叩いた。鈍い痛みが体を走る。
「ひ……ッ」
「俺の事が好きだなんて、つまらない幻想だ」
後輩は、走って逃げていった。

 俺が、俺で無くとも構わない。
「偉くなる」
  タカムラ リョウコ


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