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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ミドリノヒミツ-9


 その頃、パルは荷物の散乱した宿屋の部屋の前で呆然としていた。

「……え……何?……リュディ……?」

 ドアに鍵は掛かっていた……しかし、窓は大きく開け放たれていてカーテンが風で揺れている。
 リュディは綺麗好きだから部屋を散らかしたりしない……ましてや窓全開で何処か出かけるなど……。

「やだっ?!リュディ?!」

 ようやく状況が掴めたパルは、部屋中のドアを開けてリュディを探す。
 散らかった荷物を調べてみると、薬草調合中に何かが起きたらしい。
 パルの瞳が赤く染まって耳が尖った。
 バサリと音を立てて広がった蝙蝠の翼が壁に当たってランタンを落とす。
 ガシャンという音と共に床に転がったランタンを無視し、パルは鼻をヒクつかせた。

「リュディの匂い……薬草の匂い……後、ピィの匂いは除外……って、ピィも居ないじゃないのよぉ〜…」

 ブツブツ独り言を言いながら、嗅覚を操作して部屋にある残り香を探る。

「……人間……男ね……3人かな……」

 しかし、何だか覚えのある匂いだ……しかも、つい最近嫌な記憶と共に嗅いだような………。

「あ!!アイツだ!!」

 昨夜、精を吸い付くして砂漠に放置した筋肉サド男。
 多分、かなりプライドが傷ついたのだろう。
 弱い生き物を凌辱する筈が、逆に凌辱されたうえに砂漠に放置など……それに腹をたてて復讐に来た……という所か?
 だとしたら何故リュディを拐ったのか?

「……あ、違う……アイツ来てないや」

 男3人に付いていた残り香を感知したらしい。
 仲間か雇ったゴロツキか知らないが、この部屋に居る女を連れて来いと頼まれたのだろう。
 しかし、そこに居たのはパルじゃなくてリュディだった。
 人違いだと知るよしもなく、リュディは拐われた……といったところか。

「……アタシのせいだ……」

 いくらムカついたからといってあんな記憶を刷り込む事はなかった。
 いつもみたいに記憶を消して「やだぁ覚えてないのぉ?」なんて甘えて誤魔化せば良かった。
 パルはギリっと歯噛みすると、匂いを辿って窓際に立つ。
 風で大分流されてはいるが追いかけられそうだ。
 翼を広げて窓から身を乗り出そうとした、その時……。

『ピーーーーーッ!!』

 甲高い笛の様な声と共に視界をミントグリーンの毛が覆った。



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