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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ミドリノヒミツ-8


「!!ピィ?ちょっ……攻撃無しっ!!」

 テオは慌ててファイターの前に飛び出し、砂煙の中の細長い生き物に駆け寄った。
 ミントグリーンのふわふわの毛に、団扇の様に大きくて尖った耳。
 くりくりの黄色い瞳はテオを見つけると短い手足をバタつかせてぴょんぴょん飛び上がる。

「やっぱり」

 テオは武器を鞘に収め、ピィに近づいた。

「な、何だ……それ……?」

 テオの様子を見た冒険者達は、危険無しと判断してワラワラと集まる。

「おや。珍しい……龍の子じゃないかい」

 それを見ていた街の爺さんがテオの腕に飛び込んだピィをまじまじと眺めた

「龍の子?」

「正式な名前は知らんがな……儂らはそう呼んどるよ?砂から産まれる珍しい生き物なんでなぁ……」

 実際は卵から孵るのだが、砂の中で孵化して出てくるのならそう見えても仕方がない。

『ピッ!!ピピィッ!!』

 そんな事はどうでもいい、とピィはテオの服を噛んで引っ張っていた。

「?」

 何だか慌てている様子のピィに嫌な予感がするテオ……もしかしてリュディとパルに何かあったのだろうか?

「よし。分かんねぇけど分かった!案内頼むぜ!」

『ピッ!』

 テオは頷いてピィの頭をぐりぐり撫で、地面に降ろした。
 早く早くとぴょんぴょん跳びながら急かすピィを待たせて荷物を取りに行こうとすると、ファイターがテオに荷物を投げて問いかける。

「手伝うか?」

「いや、まだ何があったか分かんねぇし……とりあえずはいいや」

 荷物を受け取ったテオはそれを背負い、軽く手を振った。

「じゃあ、コレ。持ってきなっ」

 レンジャーが振られたテオの手に小さい物を放る。
 ぱしっと握った物は照明弾だった。

「その紐引いて空に投げりゃ良い。駆けつけてやるよ」

 冒険者達の間で助けを求める時に使うアイテム。

「サンキュ!!」

 テオはそれを握ったまま走り出したピィを追いかけ、冒険者達はテオに向かって様々な激励の声をかける。
 そんな中、爺さんが何やらブツブツと語っていた。

「……龍の子は風と雷を呼ぶ……月の綺麗な夜は空を飛ぶ姿が良く見られたもんじゃがなぁ……そういえば、ここ数十年見ておらんかったのぅ……ありがたやありがたや……」

 だが、それを聞いている者はその場には1人も居なかったのだった。



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