ミドリノヒミツ-5
「……ごめん……テオ」
正直、あのまま身を任せたかった。
テオに抱かれて穏やかな朝を2人で迎えたかった。
『……ピィ……』
ベットの枕元で寝ていたピィが、先程の騒ぎで起きたらしくリュディの首にそっと巻き付く。
まるで慰める様なピィの仕草にリュディは自嘲気味に笑った。
「……大丈夫だよ……」
ピィの長い身体をそっと撫で、ふわふわの毛に頬を寄せる。
望んだ事は簡単で……リュディには酷く難しい事だった。
翌朝、目が覚めたテオは目の前にあるリュディの顔にビキッと固まった。
(っ?!あれっ?!もしかしてヤッた?!)
しかし記憶には無い……もしかしてリュディも魔物で、記憶を操作されたのか?と一瞬疑ったがリュディからは魔物独特のオーラというか雰囲気が感じられないので、それは無いな、と自己完結する。
「リュ……リュディ?」
ゴクンと生唾を飲んだテオは恐る恐るリュディの肩を揺らした。
冒険者の割にはほっそりとした肩……砂漠を旅していたのに白い肌……さらりと顔に掛かる緑がかった金髪……何もかもがドンピシャ過ぎて思わず見惚れてしまう。
「……ん……」
少し眉根を寄せたリュディが小さく声を漏らし、テオは慌てて手を離した。
「リュディ?」
ぽやんとしたオレンジ色の目をゆっくり瞬かせたリュディは、ふんわりと微笑む。
「……おはよう……」
望んだ形とは少し違うが、2人で朝を迎えられてリュディは素直に喜ぶ。
「お……はよ……って……何で?」
テオは状況が分からずにキョトキョトと部屋を見回した。
ベットはリュディで自分は床、の予定だったのに……何故2人して床で寝ているのか不思議でならない。
「……テオ……寝ちゃったから……私も寝たけど……寒くて、潜り込んだ」
どうやらテオをカイロ代わりに使ったと言いたいらしい。
「あ……なんだ……ヤッたかと思ってビビった」
テオは上半身を起こしてポリポリと後頭部を掻いた。
「あれ?何か痛い……」
掻いた頭が妙に痛い気がするテオは、掻くのを止めてスリスリと擦る。
「ん?……そう?」
リュディはすっとぼけてもぞもぞと起き出した。
ごめ〜ん♪私がぶっちゃった♪なんて言えるワケが無い。