ミドリノヒミツ-3
「は、はい?!」
テオは姿勢を正してリュディの言葉を待つ。
「……敬語……やめて欲しい……」
「へ?」
「年上っていっても……3歳だけだし……薬剤師だけど……別に偉くない……」
拗ねるように言うリュディは本当に子供の様だ。
3人で居た時はパルとテオの軽快な会話をただ聞いているだけだったが、こうやって2人で話すとリュディは実年齢よりずっと幼く感じる。
「じゃあ、リュディさんにもお願いがあります」
「……何?」
まだ敬語を使うか、とリュディは益々拗ねながらテオを伺った。
「ちゃん付け無しで呼んで下さい!」
「……?!」
「女の人にちゃん付けで呼ばれるの嫌なんです!そりゃ、スッゲェ年上のおばちゃんとかなら良いですけど、リュディさんには呼ばれたくありません!」
テオは腕を組んでふんっと横を向いた。
リュディが呆気にとられて見ていると、テオの赤い目だけがリュディに向けられる。
その目は悪戯っぽく笑っていた。
「ぷっ」
思わず吹き出して笑ったリュディに、テオも声を出して笑う。
「ふふっ……分かった……テオ……ね?」
「おうっ。改めてよろしくリュディ」
テオがコップを差し出すと、リュディもコップを出して軽く合わせた。
コンッという安物の音に、2人は再び笑うのだった。
何だか楽しくてしこたま飲んだテオは、床に大の字になって寝ていた。
「……テオぉ?風邪ひくぉ?」
リュディもリュディで飲み過ぎてベロンベロン……完全に呂律が回って無かった。
「……んしょっ」
頭の中も回ってないらしく、テオの服を掴んでベットへ引きずり上げようとする。
リュディより身長は低いが、一応テオは男だ。
女の手で簡単に持ち上がる筈がない、という簡単な事が分からない。
「んあ〜?リュディ〜?」
乱暴に引きずられたテオは、顔をしかめてうっすらと目を開けた。
「ぁ……起きた……?自分でベットにいぃっ?!」
手を離したリュディの腕を、今度はテオが掴んでぐいっと引き寄せる。
突然の事でリュディはらしくも無くすっとんきょうな声を上げた。
「テオっ?!」
「リュディもそんな声出すんだ?」
テオはクスクス笑ってリュディの髪に顔を埋め、すうっと息を吸う。