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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ミドリノヒミツ-15


「……リュディ?」

 リュディのオレンジ色の目は蔦の塊をジッと見ている。
 その視線を追うと、塊の中には人が居た。

「おおお ぉ ぉおおぉぉ ぉぉ お」

 不気味な声の正体は塊の中の人の呻き声。
 多分、パルの獲物でリュディを拐った張本人だろうが、白目を剥き口からダラダラと涎を流し、しかも身体からは肉を突き破って蔦が伸びていた。

「これ……なん……だ?」

 テオは昔聞いた事のある『ザルス』という植物を思い出す。
 地中を徘徊して獲物を捕まえる巨大な植物。
 しかし『ザルス』は水が豊富な地域に生息している植物だし、人間を地下に引きずりこんで本体である球根に取り込む。
 こんな風に人間から生えたりはしない。

「おお ぉ」

 テオは呻き声をあげ続ける男から目を反らし、改めてリュディを見た。
 焦点の合わない目はテオに気づいているのか、いないのか分からない。
 喉から腹にかけて薄く切傷が続いており、血を流していた。
 そして、その下……緑っぽい金の茂みの所には……テオと同じモノがぶら下がっていた。

「リュ……ディ?」

 美しい顔に艶やかな金髪……控えめだがふっくらした胸……どこを取っても女性なのに、彼女は男のシンボルを持っていたのだ。

 リュディは虚ろな目をテオに向け、その目を見たテオはギクリと身体を強張らせる。

「……見た……?」

 リュディの口が小さく動いて微かに声が漏れた。

「リュっ?!」

 テオが呼びかけようとした瞬間、背後から伸びてきた蔦が首に絡む。

「リュディ!」

 パルが悲鳴を上げて駆け寄ろうとするが、蔦に阻まれ中々進めない。
 テオの足が宙に浮き、バタバタと揺れた。

「……秘密……」

「ッ!?」

 段々と高く持ち上がるテオを、リュディは黙って見ていた。
 喉が内側に張り付き、全く息が出来ない。
 蔦を引き剥がそうと暴れるテオの顔が紫色へ変わっていく。

『ピィッ!!』

 ピィが蔦を噛んで引っ張るがビクともしなかった。

「リュディ!止めて!テオだよっ!」

 やっと辿り着いたパルがリュディの両肩を掴んでガクガク揺らした。

「パ……ル」

「うん!パルティオ!それに、テオとピィだよ!もう大丈夫だから!ね?」

 ひと言ひと言を頭に刻むように言ったパルの言葉は、リュディにゆっくりと染み込む。



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