ミドリノヒミツ-14
ピィの案内で薄暗い廃虚に辿り着いたテオは、一度呼吸を整えてから建物に足を踏み入れる。
「テ、テオ……あのね?」
そのテオをパルの声が引き止めた。
「んだよ?」
パルには珍しく言葉に詰まり、どうしようか視線をさ迷わせている。
「早く言えよ。リュディが心配だ」
テオはイライラしながらもパルの言葉を待った。
「あの……実はあまりリュディの命は心配してないの」
「はぁ?」
パルの言葉にテオは頭の中を疑問符でいっぱいにする。
「心配なのはリュディの心と相手の男……それから、テオ」
「は?」
益々もって分からない……パルはいったい何を言っているのか?
「これから何が起きても……」
(……アタシ達を嫌いにならないで?)
最後まで言う事が出来ずにパルは下を向いてしまった。
それは魔物である自分が言うには、あまりにも自分勝手なお願いだと思ったからだ。
「?良く分かんねぇけど、オレなら心配すんなよ。な?」
きっと自分のせいだと責任を感じてこんな事を言っているのだ、と結論づけてテオはパルの頭をポスポス撫でる。
「……うん、ごめん……行こう?」
パルは撫でられた頭を擦り、顔を上げる。
とにかく、リュディを見つけるのが先決だ。
地下に伸びる階段を降りている時、妙な音が耳についた。
まるで獣が呻いているかのような声に、テオの顔がしかめられ、パルはあちゃっという表情になる。
パルが止める間もなく階段を降りきったテオが、扉を開けて見たものは衝撃的なものだった。
地下室いっぱいに生えた蔦植物……それは壁や床を突き破り異常な程に成長していた。
そして、壁際にはその蔦が集まっており大きな塊を作っている。
その塊の中から不気味な呻き声が聞こえているのだ。
塊の前にはボロボロに服を切り裂かれたリュディが立っていた。
両手は後ろに縛られ、緑っぽい金髪も縺れている。
ズボンと下着も引き裂かれ、足首にまとわりついていた。
「リュディ!」
全然無事じゃないが生きている姿を見て、テオはリュディに駆け寄る。
途中、蔦に足をとられたりしたが何とかリュディの元に辿り着いた。
「リュディ!大丈夫か?!怪我は?」
リュディの肩に手を置いたテオは、彼女が微動だにしないのに気がついた。