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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ミドリノヒミツ-11


「ピィがえらい剣幕でバイト先に来た。なんか慌てっから追いかけて来たんだ」

 街中を疾走するピィを追いかけている時、窓辺に立つパルが見えた……しかも、魔物の姿で。
 驚いたテオは咄嗟にピィの尻尾をひっ掴み、ぐるぐる回した挙句パルに向かって投げたのだ。
 あの時のピィの甲高い声はパルに対する警告ではなく、ただの悲鳴だったらしい。
 その時の事を思い出したピィは、鼻を膨らませて怒りをあらわにした。

「ワリィワリィ」

 テオは右手を立ててペコペコ謝るが、全然誠意が見られない。
 ピィは鼻からぷしゅうっと蒸気を出して横を向いてしまった。

「……で?何があったんだ?リュディは?」

 今度はテオが問いかけ、パルが状況を話す。
 昨夜の男の事……自分と間違われてリュディが拐われたかもしれない事……残り香の事……まだ何とか追いかけられそうだという事。

「分かった。オレも手伝う。他に手は要るか?なんなら助っ人呼べるぞ?」

 テオは冒険者仲間から貰った照明弾を懐から出した。

「今はいい。アタシ、魔物じゃん?これじゃ反対に退治されちゃうし」

 苦笑するパルにテオはズビシと手刀で突っ込む。

「それだ。それ仕舞えよ」

 何で怒鳴りつけたのか思い出し、テオはパルの尖った耳を引っ張った。

「いたたっ……でも魔物じゃないと匂い追っかけらんないもん」

 人間のふりをしている時は魔物の力が半減する。
 だからパルは魔物の姿のまま追いかけようとしたのだ。

「ピィなら行けるんじゃね?オレを呼びに来れたぐらいだし」

 広いエザルの街でテオの所に一直線で来たっぽいピィの嗅覚は、魔物形態のパルより優れている可能性が高い。

『ピッ!』

 ピィは任せとけ、と言わんばかりに尻尾をピシピシ床に打ち付けた。

「だあら、仕舞え?大丈夫だって。とりあえずピィに任せようぜ?」

 テオの言葉にパルの翼がシュルシュルと背中に仕舞われ、耳や目が人間形態になる。

「分かった。ピィ、お願いね?」

 パルは自分の荷物とリュディの荷物をまとめ、急いで宿屋に支払いを済ます。
 裏路地で待っていたテオとピィは、パルが来たと同時に走り出した。

(リュディ……)

 2人はリュディが無事でいる事を祈りつつ、ミントグリーンの影を追いかけるのだった。



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