ミドリノヒミツ-10
「ふぎゃっ?!」
ミントグリーンの毛はパルの顔に勢い良く張り付いて、彼女を部屋へ押し戻す。
「わ、わ、わきゃっ?!」
足をもつれさせたパルは翼でバランスを取るも、そのまま床に尻もちをついてしまった。
「〜〜〜っイッたぁ〜い」
『ピゥ』
お尻の痛みで涙目になったパルの頬を、ミントグリーンの毛……ピィが申し訳ない様にさりさり舐める。
「ピィ?いったい何すんのよぅ〜」
ぶつかってきた犯人がピィだと気づいたパルは、ホッと安堵しつつも酷い仕打ちに文句を言った。
「そりゃこっちのセリフだ。何してやがんだ、このバカ魔物っ」
そこに登場したのはテオ。
彼はゼイゼイと息を切らし、前屈みになりつつもパルを睨んでいた。
「……テ……オぉ〜」
テオを見た途端、パルの顔がふにゃあっと崩れる。
大きい目からは大粒の涙がボロボロ零れ、テオは思わずギョッとした。
「なっ?!何で泣くんだよっ?!」
「だってだってぇ〜」
ぐずぐずと泣くパルに戸惑いつつ、とりあえずドアを閉めたテオは躊躇いがちに彼女を優しく撫でる。
「怒鳴って悪かったよ」
優しくされたパルは益々泣き崩れ、テオは困った顔をピィに向けた。
視線を受けたピィは軽く首を動かしてテオを促す。
抱いて慰めてやれ、と言っているようだ。
テオは困った顔のまま、パルを撫でていた手で彼女の頭を引き寄せた。
トンとパルの額がテオの胸に当たり、パルはしゃっくりをあげながら目をぱちくりさせる。
「よ〜しよし……大丈夫、大丈夫だぞぉ」
反対の手が背中を擦り、動物を相手にする様な声をかけるテオ。
性的な意味で抱く時は躊躇いが無いのに、こういう普通の時は逆に不器用だ。
パルは思わず吹き出して笑ってしまう。
「あ、てめ、人が優しくしてんのに笑うたぁ良い度胸だな」
「だ、だって……くくく」
チラッと見上げたテオの顔は恥ずかしそうに赤く染まり、余計に可笑しい。
「ごめん……うん。大丈夫」
パルはテオの胸に手を置いて身体を離し、ぐじぐじっと涙を拭いて目を閉じた。
落ち着くように大きく息を吸って、ゆっくり吐き出す。
「よし……テオはどうしてここに?」
まずは情報交換からだ、と目を開けたパルはテオがここに居るワケを問いかける。