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青い夏休み
【その他 官能小説】

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夏草のしおり-2

 遥香が歩くだけで、スカートと肌のこすれる音が聞こえるほど静かな部屋。
 カーテンを開けて明かりを取り込むと、細かい埃がキラキラと舞った。

 開館時間までのわずかなひととき、遥香はここで読書することを日課にしている。
 机も椅子もないので、遥香はもっぱら立ち読みである。

 青春ラブストーリーもあれば、ミステリーなどの流行小説も網羅しているのだから、本好きのにんげんにはまさに楽園と呼べる空間だ。

 歩きまわる足が止まり、遥香は一冊の文庫本を手に取った。
 まずは口の中にたまった唾を飲み込んで、しおりのページをめくってみる。

 一度に数行しか読み進められない小説でも、内容の濃密さに圧倒されて、読み終わったあとにはいつもジェラシーのような感情が残るのだった。

 昨日はどこまで読んだのか、少しさかのぼってから脳裏でリピートをつぶやき、つづきを音読した。
 それこそ外に漏れないくらいの、さえずる声で。

「ソフィーはそのとき、ふるえる指先で彼の動脈を────夫以外の異性に求められるままに、かぐわしい肉体の表皮を湿らせる官能が────だめ────淫らな花園の奥深くからしたたる甘い蜜の糸と────貞操をもてあそぶように焦らされたり、ときにははげしく突き上げられて────わたしの胎内でうごめく悦楽が、オルガズムの刻印をヴァギナに描いていく────あなたとなら、どうなったってかまわない」

 遥香は目を閉じて、吐息をつく。
 ひどく喉が渇いて、ブラジャーの締めつけに息苦しさをおぼえた。

 いつの間にか脚をクロスさせているのも、いつものことだった。
 熱のこもった下着の局所局所が、ほかのどの部分よりも恥ずかしい反応を示しているのがわかる。

 ふとして壁の時計を見て、携帯電話の時刻も確認した。

 やっぱりこの部屋の時計は少しだけ遅れている──。

 しおりを挟みなおした本を元に戻すと、遥香は書庫をあとにした。


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