投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「ガラパゴス・ファミリー」
【近親相姦 官能小説】

「ガラパゴス・ファミリー」の最初へ 「ガラパゴス・ファミリー」 30 「ガラパゴス・ファミリー」 32 「ガラパゴス・ファミリー」の最後へ

前章-6

 粛々と式を終え、殆どの生徒が母親に連れられて帰路に付く中、伝一郎や晶子ら一部の子供逹は、自宅とは別の方向へと歩き出す。
 晶子を含む子供の殆どは女子で有り、その胸には小さな風呂敷包みを一つ抱かえ、仲買と呼ばれる男の傍に立っていた。
 母親は、涙ながらに娘の無事を祈り、断腸の思いで手離してしまう事を謝り続ける傍ら、娘を売った金に安堵の表情を浮かべている。
 晶子の母親も、晶子を抱いて別離を惜しんだが、当の本人は表情も変えずに黙って抱かれていた。まるで、世捨て人のように。

 そんな悲しい別離の中にあって、伝一郎は、毛色の違う異彩を放つ。
 例の馬車が学校の傍に停車して、背広姿の伝衛門が従者を従えて現れた途端、大勢居る人々は一気に端へと退き、行く手を開けた。

「お前が伝一郎か……成程、目許は菊代そっくりだ」

(これが、僕の父さま……)

 初めて目にした伝衛門は、予想した通りの傲慢さを、その表情に醸し出していた。

「菊代との約束通り、今日からは儂がお前の親で有り、後見人と為って仕込んでやるからな」

 伝衛門は笑みを湛え、その右手を伝一郎の右肩に置いた。その時、伝一郎が視線の先で見ていたのは、仲買人に連れられて行く、項垂れた晶子の姿であった。

 ──言いなりなんか、真っ平御免だ!

 伝一郎は肩に置かれた手を払い除けると、伝衛門を憎みの眼で見据えた。

「ずっと、僕や母さまを放っておいたくせに、今更、何しに来たんだ!」

 菊代の哀願によって、心の奥底に押し留めていた不満が、晶子と言う存在をきっかけとして、一気に表面化したのだ。

「貴様……それが親である儂に対する言葉か!」

 伝衛門は、怒りを顕にして怒鳴り散らすが、伝一郎は気圧される事は無い。寧ろ冷静さを保って言い返した。

「男としての責任も取らず、今更、父親だなんて恥ずかしくないの?」
「貴様あ……」

 互いの想いがぶつかり合う。表情を変えずに冷たく罵る伝一郎に対し、伝衛門は怒りの余り、鬼の形相で我が子を睨み付けるが、相手の真っ当な意見に、ぐうの音も出無い状況だった。

 その時だ。

「伝一郎!」

 突如、菊代が伝一郎に駆け寄り、その頬を強く叩いて叱り付けた。

「お、お父様に、何て口の利き方です!謝りなさい」

 伝一郎は驚いた。頬の痛みより、菊代が伝衛門を擁護している事に。

「か、母さま……何で」
「貴方は私との約束を反古にするのですか!?」

 菊代は、凄まじい気迫を持って伝一郎に詰め寄る。

「母さま……」
「貴方は黙って、お父様に従えば良いのです」

 母として、我が子の憤りは充分過ぎる程解っている。が、苦心を重ねている今の暮らしぶりでは、我が子に未来が無いと解っているからこそ、別離を決めたので有り、それを反古にする積もりは無かった。


「ガラパゴス・ファミリー」の最初へ 「ガラパゴス・ファミリー」 30 「ガラパゴス・ファミリー」 32 「ガラパゴス・ファミリー」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前