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「ガラパゴス・ファミリー」
【近親相姦 官能小説】

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前章-3

「伝一郎が、貴方の下に行った場合、如何ような扱いを受けるのです?」

 菊代の中で、伝衛門に対する見方が変わった。

「儂は小学校も碌すっぽ出とらん。自分の才覚だけで此処まで登り詰め、子爵の娘を娶るに至った」

 伝衛門も又、菊代から強引に伝一郎を引き離すのは、得策で無いと感じていた。

「──だが、儂は所詮、田舎の経営者だ。狭い見識でしか物事を考えられん。
 伝一郎には最高学府の教育を受けさせて、幅広い見識を持つ人間になってもらいたい。
 そして、後々には儂の跡目を継ぎ、今の会社を踏み台として、更なる飛躍を成し遂げてくれればと思うておる」

 強い情熱と夢の詰まった未来予想──菊代は思う。仕立ての内職で何とか生きている自分では、とても描けない画であり、どちらが我が子にとって安泰かは明白で有る。
 この時、菊代の頭の中を、伝一郎と過ごして来た十ニ年が、走馬灯の様に駆け巡り、これまで感じた以上の愛しさが、こみ上げて来た。

「解りました」

 菊代は三つ指を着き、伝衛門に頭を下げた。

「──伝一郎の事、卒業後にして貰えませんか?」

 伝衛門は、顔を紅潮させた。

「おお!では……」
「はい。どうか伝一郎を、宜しくお願い致します」

 取り決めが交わされ、一月後に我が子との別離が決まった時、菊代は伝一郎との目交わいを持つ事を決めた。
 最初は、若い情欲だけを満たそうとする、独りよがりが目立つ拙い物だった。
 しかし、回を重ねる度に、急所への責め具合が巧くなり、次第に彼女の方が、快感に打ち震える様に為った。
 愛しい我が子の居ない生活など考えられ無い。そう思えば思う程、情欲の焔は燃え上がり、快楽の海へと溺れて行った。
 毎夜繰り広げられる我が子との激しい目交わいを、何時しか待ち望んでいる自分が「恐ろしい」と言う不安に襲われたのも事実だ。
 だが、それも今日までだ。今日の卒業式を無事に終えれば、伝一郎は迎えの馬車で父、伝衛門の下に送り届けられ、二人の関係も終止符を迎える事と為るのだ。



「忘れ物は有りませんね?」
「はい……」

 菊代は玄関の前で、我が子の身だしなみを確認する事を日課としていた。この光景も今日が最後だと思うと、感慨深さもひとしおで有る。

「なんだか……首元が窮屈で」
「ほら、背筋を伸ばして。しゃんとなさい」
「でも、変じゃないかな?」

 いつもの着物と袴と違う、詰襟に革靴と言う出で立ち──卒業を記念して伝衛門から贈られた物だが、菊代は黙っていた。

「凛々しく見えて、とても素敵よ」
「本当に?」
「ええ。だから安心してお行きなさい」
「分かった」

 菊代に褒められた事で、漸く表情にも明るさが出た。

「じゃあ、行って来ます!母さまも早く来てね」
「ええ。直きに参りますから」

 菊代は、玄関先で見送っている。姿が次第に小さくなり、見え無く為った所で、彼女の目から涙が溢れた。
 もう二度と、我が子がこの家の敷居を跨ぐ事は無い。此処で過ごして来た二人の生活は、たった今、終わりを告げたと思うと、こみ上げる物を抑える事が出来無かった。


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