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漆黒の淫靡
【OL/お姉さん 官能小説】

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漆黒の淫靡-3

「東京です…世田谷。」

おなかが落ち着いたら、ずいぶんと気持ちに余裕が出てきた。

「駅はここからまだ、遠いのですか?」

老人は穏やかに頷いていた。
目が不自由なのか大きな瞳が白く濁っているのが部屋の中の少し薄暗い、暖かな灯りに映し出されている。
ようやく気付いた事にまずここには電気がない。

それから…

それから今さらながら、この建て家がまんまるだった事に気がついた。
おそらく集落の公民館のような場所なのであろうか、いつかテレビで観たモンゴルの放牧民の住居を思わせる。

「棲家は近い。どこにいようが自分の棲家というものは常に傍にあるものじゃ…」

「はぁ…」

もう電話を貸してくれなどと言い出す気にもならなかった。
とにかく、今夜はここで体力を養って明日、村人に道案内してもらえばよい事なのだ。

モンゴルの人って、こんな顔立ちをしていただろうか?
この人たちは何らかの事情でモンゴルから移住してきて、ここにひっそりと集落を築いた…
それならば、山の精でも妖怪でもなく容姿の違いも言葉の違いも安に理解できる。

私の気持ちは持ち前の楽天的な性格が幸いして、もう何の不安も残さなかった。
いつの間にやら、老人の傍には数人の男がついてうずくまっている。
そうして縄文土器のような瓶が運ばれて、お酒を振る舞われる。

無理にでも安心する事で不安を押し潰そうと、私はついでにそれをご馳走になった。
瓶から器に注がれた液体はラズベリーに似た木の実の匂いがして、色もやはり透き通ったワインレッドだった。

深みのある木の香りは微かにウイスキーに似た匂いを思わせる。
…そして爽やかな果実の甘みが喉元に染みていく。

あぁ…おいしい…

男たちもそれぞれに瓶の中身を酌み交わし、それはおおよそ歓迎の宴のような場になる。
できれば今日は疲れてしまったし、明日の鋭気を養いたいところだけどお酒があまりにもおいしくて…

山の人たちなら、近道も知ってるはずだから少なくとも私が歩いた距離ほどはかからないだろう。
昼まで眠っていても夕方には人里に辿りつくはずだ…

もうそんな些細な事など、どうでもいいような気になってきた。
そう…家なんて、いつもすぐ傍にあっていつでも帰れるんだ。
とにかく、私は疲れていたのかアルコールの巡りが早くて激しい動悸を覚えた。
たしかにウイスキーに似た香りがするから思いの外、強いお酒なのかも知れない。
口当たりは甘くて、完全に酔ってしまって目眩さえするのに気持ちは高揚して仕方がない。

能天気な性格に生まれて、本当に良かったと思う。

「我ら皆、平家の落ち人の末裔なのじゃよ…」

老人は静かに続けた。
周りの男たちも楽しげに宴に酔うが老人は一口も手をつけなかった。

「今も昔、廃藩置県が行われた時…我々はこの里を人目から隠し、平家の金塊を今もここでひっそりと護っておる。」

そうなんだ…徳川埋蔵金!?
そんなの本当にあったんだ。

だけど、そんな話はどうでもいい。
体の内側から暑くてたまらない。
調子に乗って勧められるだけ呑み、ずいぶん酔ってしまって吐き気さえ覚えるのに気分はとても爽快だった。


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