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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-7

彼氏が出来ないことなんて、絹子やスウィングのみんなにしょっちゅう言われていたから、バカにされても屁でもなかった。


なのに、赤の他人にこんなにバカにした口振りで同じことを言われると、怒りよりも悲しさの方が先立ってくる。


「あのレジのお姉ちゃんは可愛い顔してるから、男はほっとかないだろうけど、あんたはちょっと残念な感じだもんな」


おじさんの声はやたらでかくて、周りのお客さんも失笑気味にあたし達をチラチラ見ては哀れそうな顔をしている。


そんな同情的な視線が、かえって辛いよ。


溢れてきそうな涙と必死に戦っているあたしに気付かず、おじさんはガハハと笑い声をあげた。


「でもまあ、嘆くなよ? 世の中にはマニアってやつがいるんだよ。レジのお姉ちゃんみたいな可愛い娘よりも、あんたみたいにちょっとランクが下がった方が好みっていう男もいるんだ、オレみたいにな」


「え!?」


おじさんは日焼けでくすんだ褐色の手で、あたしの手首をグッと掴んだ。


「なあ、仕事終わったら一緒に飲みに行かないか?」


「え、いや……ちょっと……」


掴まれた手がやけに湿ってベトついていて、嫌悪感と恐怖で全身に鳥肌が立ってくる。


や、やだ……怖いよ……。


おじさんは掴んだ手をゆっくり緩めて、今度は変に優しく撫で回してきた。


「なあ、いいだろ? 少し付き合えや。そしたらさっきの態度も許してやるよ」


許すも何も、あたしは間違ったことを言ってないのに……。


でも、ホントに怖い時って声が出ないし、身体も動かない。


唇がワナワナ震えるだけだ。


そんなあたしを見て、おじさんがペロリと自分の唇を舐める。


その赤い舌が蛇を連想してしまい、完全に蛇に睨まれたカエルになってしまった。


グイッと身体を引き寄せられ、おじさんの手が身体に伸びてくる。


「な、キモチイイことしてやるぜ」


や……だ……。


声すら出せないあたしは、目をギュッと瞑ることしかできなかった――。






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