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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-4

あたしが午後3時からバイト入りしてから、ほとんどピーク状態だった。


元々土日の午後はピークを迎えるものなんだけど、花火大会のせいなのか忙しさはいつもの倍に思えた。


だって、店内が常に満席なのはもちろんのこと、さらには早くから場所取りする人の腹ごしらえ用なのか、テイクアウトもたくさん出るし。


エアコンをガンガンきかせているはずの店内が温室みたいに暑く感じるほど、目の回るような忙しさだった。


そんなピークが一段落した時間帯なんて、花火打ち上げ開始時刻の午後8時からたった一時間くらい。


それが終われば二度目のピーク。


わんさかわんさか、どこから沸いて出るのってくらいのお客さん。


その大半が、花火大会帰りの浴衣を着た女の子グループやカップルだった。


慣れない浴衣と下駄で、すっかり疲れたんだろう。ちょっとお茶して休もうって考えらしい。


でも、おしゃべりに花を咲かせているお客さんはみんな、さっき見た花火の余韻に浸っていたのか、こぼれそうなほどの笑顔だった。


そして自然と目線が行くのは、やっぱりカップル達。


とびっきりの笑顔を彼氏に向けてる女の子達は、キラキラ輝いていた。


そうだよね。好きな人と一緒に見る花火って格別だよね。


少し寂しさを押し隠しながら、あたしはお客さんから空のグラスが載ったトレイを受け取り頭を下げる。


「恐れ入ります、ありがとうございます」


あたしがそう言うと、頭を下げてくれる浴衣カップル。


「ごちそうさまでした」


うひゃ、イケメンだ。


かなりかっこいい彼氏と、淡いピンク色の浴衣を着たほんわかした雰囲気の可愛い彼女。


爽やかな雰囲気で、とってもいい感じ。……と思ってたけど。


「さ、帰るか」


「コンビニでなんかおやつでも買ってく?」


「んー、オレはおやつよりメグを食いたい」


「バッ、バカ!」


……こいつらもバカップルか。


シシシと笑うイケメンに、彼女は真っ赤になってパンチをしようとした。


でも、そのパンチは片手で軽々キャッチされ、そのまま腰の辺りで下ろされる。


そしてその手は指をゆっくり絡め合って落ち着いたようで、あとはぴったり身体を寄せ合うと、店を後にするのだった。






……いいなあ、これから二人は一緒に帰ってイチャイチャしまくるんだろうなあ。


バカップルと言えども彼氏からあんなに愛情表現されていれば女冥利に尽きるよね。


まだ誰とも付き合ったことがないあたしには見目麗しいカップルを目の前にすると、どうしても欲が出てしまう。


あんないい男、どっかに転がってないかなあ、って。


ふと、カウンターの中を見れば、黙々とウォッシャーを回し続ける駿河と目が合った。


そして、意味無く「バカ」と口パクして意地悪そうに唇をクッと上げやがるのだった。





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