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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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なんか、ヘンですよ?-11

店長はあたしと駿河を見つけると、不思議そうに首を傾げた。


「あれ、どうしたの? 二人してフロアに出ちゃって……」


駿河はさっきの出来事を報告するのだろうか。


あたしを助けてくれたとは言え、あの態度をバカ正直に店長に伝えたら駿河は何らかの処分を受けてしまうかもしれない。


駿河はいつもの真面目な顔になって、店長に深々と頭を下げた。


「どうした、駿河くん?」


「店長、すいません……。実は私、さっきお客さんに……」


それが原因で、駿河がクビなんかになったら……?


苦い顔して、おずおずと話し始める駿河を見た瞬間、あたしの頭の中がパンと爆ぜたような気がした。




駿河がクビになるなんて、そんなの絶対やだ!




次の瞬間、あたしは駿河の身体をドンッと突き飛ばしていた。


さらには、目を丸くしてあたしを見る駿河の足を踏んづけてやる。


「ってえ!!」


奴が悲鳴で続きを喋れない状態にしてやったのを確認してから、あたしはデカイ声で、


「あたしが食器を下げるときに、転んでアイスコーヒーぶちまけちゃったから駿河さんが掃除を手伝ってくれたんです!」


と、店長にニッコリ笑いかけた。


「あ、そ、そう……お疲れ様」


あたしの行動と勢いに圧倒された店長は、少し引きつった笑顔を見せた。


「……んじゃ、もう閉店だし、締め作業をしよう」


脂汗をかきながらニコニコ笑うあたしがさぞ不気味だったのか、店長はカウンターの中にそそくさと逃げていった。


ぼんやりと、店長の撫で肩の後ろ姿を見送っていたら、突然後頭部に衝撃が走る。


ビックリして後ろを振り返ると、憮然とした表情の駿河があたしを見下ろしていた。


「お前、何すんの」


どうやら、踏んづけられた足のことを根に持っているらしい。


「あ、あれは……その……駿河がさっきのこと正直に店長に話したらコトが大きくなると思ったから……」


「しょうがねえだろ、正直に言わないと。後からクレーム来てバレる方がヤバイんだから」


「だっ、だって……それが原因で駿河がクビになっちゃったら……」


口に出すとそれが現実になってしまいそうで、怖くて涙が出そうになる。


声が震え、詰まってしまい、思わず手で鼻と口を覆い隠して俯いてしまった。







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