マツリノヨル-3
翌日からバイトで汗を流す日々が始まった。
内容は街に入り込んだ砂の撤去と、街を囲む壁の修繕、植物の世話だ。
単純作業と体力勝負の仕事は冒険者にうってつけ。
新参者のテオはひたすら砂を運び出す作業をしていた。
「なあ、知ってるか?」
「何を?」
バイト仲間のサムの言葉に、テオは砂を土嚢に入れる手を止めて振り向く。
「今、エザルに来てる踊り子が超可愛いんだよ♪」
「へぇ〜…」
あちこち回る旅の楽団か何かだろうか?と思ったテオは、曖昧な返事をして再びスコップで砂を掬った。
「2人組の冒険者らしいんだけど、踊りを担当してるパルティオちゃんが……」
ドシャー
興奮気味のサムが話す内容に、テオの手に抱えられた土嚢から砂が流れ落ちる。
「ああっ?!何やってんだよ?!」
「いや……手が滑った……悪ぃ、続けて」
テオは動揺しつつサムに先を促した。
「?まあ、そのパルティオちゃんがな?スッゲェ可愛くてなぁ〜」
「へぇ……」
(まあ……可愛いっちゃ可愛いか……)
初対面がアレだったのであまり意識していなかったが、客観的に見たら確かに可愛い。
「踊る度に短い赤毛がふわふわ揺れてなあ〜真っ黒のくりくりお目めがキラキラしてなあ〜」
うっとりしながら話すサムは完全に仕事の手が止まっていた。
「ちっちゃいのに胸がぼい〜んで腰がキュッてくびれてて……」
(ああ……そこは同意)
テオは土嚢に砂を入れ直しながらふんふん頷く。
「ああ……1度で良いからヤリてぇ〜」
「いやぁ、止めといた方が良いぜ」
サムの願望にすかさず突っ込むテオ。
「あ、いや、ほら、そういう女って遊んでそうだし?」
実際には遊んでいるのではなく、食事をしているのだが。
「遊んでてもパルティオちゃんなら許す!!」
「つうか、下手くそとか言われたら立ち直れねぇぞぉ〜?」
経験豊富な女に言われたら傷つくだろ?と言うテオに、サムはふふんと笑って見せた。
「言われてみてぇの♪」
どっちかというとマゾだから、とサムはニヤニヤする。
「ははっ……」
テオは顔をひきつらせて温く笑うしかなかった。
「今夜、中央広場である祭りに飛び入り参加するんだと。テオも行かねぇか?」
「あ〜…気がむいたらな……」