マツリノヨル-1
「到着ぅ!!」
パルが明るい声を上げながら両手を空に向けて突き出す。
そう、やっと砂漠都市と呼ばれるエザルに到着したのだ。
砂の侵入を防ぐ為に都市の周りをぐるりと囲む石の壁。
しかし、高さはそんなに高くなく、ちょっと跳べば向こう側が見える位。
壁の内側には乾燥に強い木々や植物が植えられており、涼しげな風が吹き抜けていた。
そして、都市の中心には自然に水が溢れる泉がある。
この泉がエザルを発展させた『生命の泉』……砂漠にとっては正に命の源だ。
「良く頑張ったなぁ、お疲れさん」
テオは乗っていた砂蜥蜴の首を叩いて労をねぎらってやる。
砂蜥蜴は喉をくるると鳴らして喜びつつも、目は元気がなかった。
「?」
「……お別れだから……」
テオが首を傾げているとリュディが横に並んでポツリと呟く。
「……皆テオちゃんが好きだから……離れたくない……」
リュディの乗った砂蜥蜴が同意するようにテオに視線を向けた。
「お世話になりました」
テオは苦笑しながらリュディの砂蜥蜴の鼻頭を掻いてやる。
「……良い仲間が……見つかるのを祈る……」
ポツリポツリと話すリュディ……初めの頃はそれなりに話していたが、慣れてくると口数が少なくなった。
多分、こっちが本当のリュディなのだろう。
それだけ気を許してくれているのだと思うと、素直に嬉しい。
「はい」
テオはニカッと笑い、リュディもふんわりと笑みを返すのだった。
それから、オリーブオイルを頼まれた店に届け、砂蜥蜴を市場へ運ぶ。
別れ際、テオが4頭の砂蜥蜴にもみくちゃにされたという事は言うまでもない。
「……それじゃ……」
「はい。ありがとうございました」
「何処かで会ったらまたご馳走してね♪」
「朝食ったばっかだろが」
昼前にはエザルに着くから最後にもう1回、と朝イチで食われた。
「でも、まあ……会ったら食わせてやるよ」
「やった♪」
パルはテオに抱きついてちゅうぅっと口に吸い付き、ちゅっぽんと離れる。
離れるパルを追いかけて自分から軽くキスを返したテオは、ふと視線をリュディに向けた。
リュディはピシッと背筋を伸ばし、視線をさ迷わせる。
そんなリュディの頬にテオは少し背伸びしてキスを送った。