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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!V 『プロジェクトZ 挑戦し過ぎた者たち!?』-4

「ところで最終的な決断を、そろそろ下さねば成らんのだが。カラーリングはどうしたらいいかね!? 私はそれが一番気がかりなのだよ」
 自転車選びも大詰め、善太郎は悩みあぐねた末、痛くなったこめかみの辺りを指で押さえながら、顔を顰めて言いだした。
 嘉幸と自転車店の店主はお互いの顔を見合わせると。
「どうしたもんでやんすかねぇ……」
「う〜ん……この問題が一番の難関だよなぁ……」
 と、嘉幸も頭を捻って居た。
「えっとーぉ…… 最初が水色で次が白、赤も駄目ってんなら……そうなると、次はこれっきゃねーかなぁ」
 嘉幸はそんな事をブツブツと呟きながら、カラー見本として映し出されていた写真の一枚を指差して言った。
 すると。
「おおーーっ! これだぁ! この色は最高だっ! これなら娘も大喜び間違いないだろう!!」
 と、善太郎も嘉幸の指し示すカラーを観て、大喜びである。
「さすがは現役の男の子だっ! よくやってくれた! 感動したっ!!」
 善太郎は、嘉幸の見立ててくれた自転車が痛く気に入ったと見え、又しても嘉幸の肩を ”ビシバシ”っと叩きながら、感激の声を上げるのであった。

「店主っ! ところでこのマシンには『ターボモデル』は無いのだろうか!?」
「た〜ぼ〜っすかァ…… そいつはまた偉く、無理難題でやんすねぇ」
「私はあの、加速の時に背中を蹴飛ばされたような感覚が堪らなくてね!」
 おいおい、いったいこの親父は、自転車に何を求めているのやら。聞いていた嘉幸も、訳の解らない善太郎の要求に、こめかみを引き攣らせながら、呆れたようである。しかしながら。
「おい君っ! 何とかしたまえ! スピードの出ない自転車なんて、つまらないだろぅ! なっ、そう思うだろう!!」
 と、性懲りも無く、また嘉幸に何やら注文を付けて来たでは無いか。
 この人はいったい…… と思いながらも、善太郎の勢いに釣られてか、嘉幸も「はいっ!」っと答えてしまうと。
(こう成ったらやけくそだっ! どうとでも成れ!!)とばかりに。
「だったら前3段、後ろ8段の変速機も付けようぜ! チェンジはハンドルでやれば楽だし、リムもカーボンにしちまおうっ! 軽量化こそ最大の武器になるはずだ!!」
 そんな事を言って、有る事無い事、自分の持てる知識をつぎ込んで最強のマシンに仕立てるべく、提案を続けて行った。

 スピードを追求した究極のマシン作り、そんな果てし無き夢の目標に向かって、情熱を燃やす男達。善太郎と自転車店の店主も、既にノリノリである。あーでも無いこーでも無いと、その後も激論を続け、全くもって新型のマシン開発に終わりを見ることが無かった様子である。
 挙句の果てには「このマシンを『エンペラー』と名付けよう!」とか、「シューマッハだけには絶対に負けたくない!」などと、どうやら本来の目的を忘れてしまったようである。
 まったく、男の子って奴等は……

 数日後。

「おはよう田原ぁー!」
「よう斎藤っ! おはよー!」
 嘉幸はいつもの様に登校してくると、いつもの様に校舎裏手の『自転車駐輪場』へと愛用の白いマウンテンバイクを滑り込ませ、そしていつもの様に、そこで合った親友の『斎藤 章吾(さいとう しょうご)』に朝の挨拶をかわすと、教室へ向かうべく歩きはじめる。
 それでも、フと見るといつもは無いはずの金色の自転車が有るのに気が付き、少し驚いたような顔をして、足を止めた。
「朝霞さんも思い切ったよなぁ。『赤い自転車』が壊れたからって、今度は『金色』だもんなぁ。派手と言うか、何と言うかぁ…… どこかの軍人じゃあるまいし」
 不意に斎藤に言われ、嘉幸は冷や汗タラタラだったりする。


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