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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!V 『プロジェクトZ 挑戦し過ぎた者たち!?』-1

 最初に買った『水色の自転車』は、ものの数週間でボロボロ。次に買った『白い自転車』なんぞは、駅前の書店に停めて置いて、誰かに盗まれちまうし。その次の『赤い自転車』も1年持たなかった。

 是奈の父親『朝霞 善太郎(あさか ぜんたろう)』は悩んでいた。
「どうも家の娘は、こぅ〜物の扱いが乱暴と言うか、買い与える自転車の持ちが悪い。そうそう何度も買い換えさせられたのでは、たまらんなぁ…… こんな事なら、初めから頑丈なマウンテンバイクでも買い与えておくべきだったか」
 そんな事を呟きながら、自宅から歩いて10分の距離にある、『真仁屋(まにや)自転車店』なる店の前で、渋い顔をして立ち尽くしていた。
 何気に、店先のショウウィンドウに飾られた派手なカラーリングの『ロードレーサー』なんぞを見上げて。
「こんなのも、家の子に似合いそうだなぁ」
 などと、顔をニヤ付かせもしていた。

 そんな事を、1時間以上も店の前でやられていたら、店の店主が気がつかない訳はない。
 なにやら、下心のある悪徳商売人でもあるまいが、店主は手揉み(てもみ)をしながら満面の笑顔で店の入り口から出て来ると、顎に手を当てて、睨みつけるようにジッと店の中を眺めて居た善太郎に向かって、
「えっへへへへぇ……旦那ぁ、自転車をお探しでやんすかい!?」
 などと、話しかけるのであった。
 不意に声を掛けられ、善太郎も一瞬 ”ドキッ”とした様子だったが。それでもクールな表情を崩さないまま。
「あっああ……そうなんだがぁ。娘の通学用に良い物がないかと……ね」
 そう、店主に告げた。
 言われて店主は。
「それだったら良いのが有りますぜ! さぁさっ立ち話もなんでやんすから、中に入っておくんなせぇ」
 そう言って店主は、是奈の父『善太郎』を店の中へと引き入れた。

 善太郎は、店主に進められるまま店の中へと入って行くと、どうやら目にした光景に驚いたとでも言うのか、口を大きく開けたまま、しばし黙り込んで店の中を見渡していた。
 外見は古びて、どう見ても儲かっている風の無い『真仁屋(まにや)自転車店』ではあったが、実に品揃えは豊富と言えよう。大型量販店に勝るとも劣らないほどの、色とりどりな可愛いママチャリから、スマートでエレガント且つ、こいつは物凄いスピードが出るだろうと思われる程のスポーツ車。それに、これだったら富士山の頂上から下って来ても壊れないぞ、と言わんばかりのマウンテンバイク達が、所狭しと陳列され、善太郎に向かって一斉に、
『買って買ってぇ! 私を買ってぇ!!』
 と、大合唱で迎えている様ですらあった。
「ほほうっ! こいつは凄い物がそろってるなぁ! なんだか私が欲しくなって来たぞ!」
 善太郎はそんな事を言いながら、まるで自身が子供にでも帰ったかの様に瞳を輝かし、嬉しげな表情を浮かべ、端から端まで一通り店に有った自転車を、見て回っていた。

 そんな真仁屋自転車店であるが、どうやら店の奥には御客様接待用にと店主が用意した物だろうか、小さいながらも応接室ならぬ、応接セットの様なテーブルとソファーまで有る。
 しばらくすると、店主の奥さんだろうか、中年の少し太ったおばさんが現れ、
「良かったらどうぞっ」
 と、テーブルの上に、お茶と漬物を並べて、善太郎を持て成してくれたりする。
 善太郎は。
「どうもすみません。お構いなく」
 そう言うと、少し遠慮がちにも、応接セットのソファーに腰を降ろし、
「せっかくだから、頂きます」
 と、店主の奥さんが入れてくれたお茶に、舌鼓みを打つ事にした。


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