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「ふたつの祖国」
【その他 推理小説】

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前編U-2

「そ、そちらは大丈夫ですが、シリアと比べて費用が……」
「その事なら大丈夫だ。機密費から捻出するので、君達は納期だけを念頭に置いていてくれ」
「分かりました。直ぐにアプローチ致します」

 程なくして一人目の報告が終わり、二人目の報告へと移る。

「我々の班は、新しく増設中の装置の設置請負業者に、技術員と作業員を潜り込ませた状態で、引き続き待機中です。
 それと、現在実施中の“調査”に関しましても、作業員を四名投入しております」

 質疑応答も殆ど無く、報告は終わり、次は右の真ん中に座る製造班の番となった。

「──我々は、一般企業とその他何れかからの調達という方向で、現在、危険性を鋭意調査中です。
 なるべく“相手”との親密具合を考慮して、幾つかリストアップしている最中で……」

 製造班と呼ばれた男が説明を続けていると、その対面に座る男が不遜な声を挟んだ。

「その報告は前回も聞いたはずだが。それとも製造班は、そんなに“選定”するのが好きなのか?」
「なんだと……」

 報告を遮り揶揄するような発言に対し、製造班の男は怒気を含んだ声で応じた。

「“製品”を取り扱う企業だけでも三十はくだらないんだぞ。その上、製造箇所は数十にのぼるんだ。
 その一つ々を吟味して最適な方法を見つけ出すのに、どれだけの手間が掛かるか解って言ってるのか?」
「ひとつ々をチェックか……いかにも、秀才ズレが考えそうなこった」

 力強く、整然とした口ぶりは自信の顕れだろう。が、しかし、対面の男には通じない。
 次第に二人の会話は熱を帯びて来た。

「……お前のようにクリエイティブさと無縁な奴等は、無用な事まで調べなけりゃ気がすまないんだな」
「貴様……」
「目標から逆算すれば、最良の方法を何れにすべきかなんて、自ずと限られて来るものだ。
 そんな事さえ気付かずに虱潰しに調べているとは、役人気質が染みついちまったのか?」
「貴様……黙って聞いてりゃ……」

 薄闇の中で火花散る互いのエゴイズム。今、まさに一触即発の様相をなした時、

「二人共、止めたまえ」

 白髪の男の、静かだが威圧的な仲裁が入った。

「論爭は多いに結構だが、互いを貶るのは頂けんな」
「申し訳ありません……」

 咎められた事で、二人はバツが悪そうに俯いている。

「お互いを敬愛する事を忘れてはいかん。君達を選んだ私を、失望させないでくれ」

 部屋に静寂が戻った。それからは滞る事無く報告は進み、最後の一人だけとなった。
 白髪の男の左傍、進行役の男だ。

「それでは、サポート班から報告致します」

 男は、一旦周りを見渡して、予め整理していた記憶を言葉に出した。


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