メシアガレ-7
(〜っの……天然誘惑魔物っ)
翼も尻尾も出てるし、魔物だと分かってはいるし、その姿も獲物を捕らえる為に変化したのだというのも重々承知なのだが……勝手に股間が反応してしまう。
はしゃぐパルを背に、若干前屈みなったテオは荷物降ろしに集中する事にしたのだった。
いつもよりしっかりテントを張って、出発は明日の夕方からにしてゆっくり休む。
後1週間ほどでエザルに着く予定なので、その為にしっかり休んでおくのだ。
飲料用に水を汲み、砂蜥蜴を綺麗に洗ってやり、人間の方も身体を清める。
テオのお願いで砂蜥蜴が壁になり、即席の仕切りを作って一緒に水に入る3人。
「覗いちゃやあよ♪」
「お前こそ乱入すんなよっ」
軽く言い合いをしつつも皆ご機嫌だ。
そりゃそうだ、本当に久しぶりに身体を洗えるのだから無理もない。
隅々まで綺麗にしたテオだったが、やはり女2人の方が時間がかかる。
テオは先にあがって食事の準備をする事にした。
謎の生き物が何を食べるか分からなかったが、干し肉でも何でも食べるみたいだ。
何よりもリュディを母親のように慕ってべったり離れない姿が愛しくて堪らない。
「刷り込みってやつっすかね?」
産まれて始めて見たものを親と思い込むアレ。
「どうかな……ちょっと違う気がする……」
リュディはポツっと答えると、謎の生き物に小さい実をあげる。
味はイマイチだが栄養たっぷりの実……産まれたばかりの生き物に必要な栄養が入っている。
「名前決めないとねぇ?」
コリコリと実を咀嚼する生き物の顎を指で撫でたパルが、リュディに視線を向けた。
「……ぴーすけ……」
「……雄なんですかね?」
「じゃあ、ピィ」
「……そだね。それなら雄でも雌でも良いね」
どうやらリュディにネーミングセンスは無いようだ……後から知った事だが、砂蜥蜴の呼び名もリュディがつけたらしい。
「よろしくな、ピィ」
『ぴ』
テオが指を出すと、謎の生き物改めピィは指をちっちゃい両手で握ってぷんぷん振るのだった。
砂漠の夜は寒いが空が綺麗だ。
雲ひとつ無い空に満天の星……2つ在る金の月と銀の月も大きく見える。
パルは蝙蝠の様な翼を広げ、ゆっくりと揺らしていた。
蜥蜴の様な黒い尻尾も翼に合わせて振り、静かに鼻歌を歌っている。