メシアガレ-5
「わたったっ」
テオは振り落とされまいとサンドワームの身体にしがみついた。
そのサンドワームの身体は大きくのたうちながら、盛大に水蒸気を吹き出し始める。
サンドワームは水を大量に身体に溜め込む性質で、命が尽きる時それが水蒸気となって排出されるのだ。
「うぷっ」
生臭い水蒸気を浴びながらサンドワームにしがみつくテオの手には、徐々に干からびていくサンドワームの感触だけが妙にリアルに伝わっていた。
「?」
まだ暫く続くな、とテオが薄目を開けた時、光る何かが目に入った。
咄嗟に腕を伸ばして何かを掴んだテオは、それを抱えてひたすら衝撃と水蒸気に耐え続けたのだった。
「ぺぺっ……うえぇ〜」
サンドワームの水蒸気放出は5分程して終わった。
テオの手にはカサカサに干からびたサンドワームの残骸。
7メートルはあったサンドワームは縮みに縮んで、1メートル程になった。
「らっき♪高く売れらぁ♪」
サンドワームの残骸は薬剤として優秀な素材なのだ。
「……欲しい……」
そう……薬剤師のリュディが欲しがる程に。
「ダメっすよ!わざわざ完全な姿で倒したのに!」
綺麗な姿であればある程、高く売れる。
「でも欲しい……頂戴……」
リュディは両手をテオに向けてふらふらと近寄って来た。
「ダーメったらダメです!これは売るのっ!!」
2人の押し問答の末、リュディが3割貰う事で手を打つ事になる。
薬剤師の……いや、リュディの薬剤に対する執念は見事なものだった。
「それよりさ……それ、なぁに?」
2人のサンドワーム争奪戦を黙って見ていたパルが、テオのお腹辺りを指差す。
「あ?」
テオのお腹は不自然に膨れていた。
「あ!ああ、忘れてた。さっき見つけて咄嗟に服ん中に入れたんだった」
テオは服の中に手を入れて中にあるモノを取り出す。
それはミントグリーンの色をした卵……両手に乗る位の大きさのそれは、テオが見た事の無い卵だった。
「何の卵か知ってっか?」
こういうのはパルが詳しいだろうと勝手に決めつけたテオは、卵を彼女に差し出す。
「ん〜…?見た事無いなぁ……リュディ分かる?」
パルの問いかけに、サンドワームをにまにまして眺めていたリュディが顔を向けた。