メシアガレ-2
「テオちゃん……本当の事ははっきり口に出すものじゃない」
フォローになってない。
「すんません。リュディさん」
謝る相手が違う。
「ふん、だ。テオのバ〜カ」
パルはベーっと舌を出すと、蝙蝠の翼を広げて空に飛んで行った。
それを見上げたテオは首の後ろを掻いて小さくため息をつく。
「テオちゃん?」
そんなテオに首を傾げたリュディに、テオは苦笑してみせるのだった。
(冷たいんだから)
パルは空高く飛びつつ周囲に目を光らせる。
別にいじけて飛んで逃げたのではない。
エザルに行くのが最終目的だが、近くにオアシスがあれば寄りたいのだ。
地図に載ってるオアシスはまだ先だが、たまに小さいオアシスが発生してたりするのでそれを探す。
(……どうせ魔物ですよ〜だ)
魔物である自分を恥じた事は無いが、テオのあの態度は無いと思う。
(美味しいのにぃ〜)
初めは同意だった……2度目は渋々だった……その後は、嫌がられた。
(はぁ……お腹空いたなぁ……)
そろそろ1週間……普通ならひと月はもつのに、テオの精を食べてからは我慢が効かなくなった。
淫乱暴食悪食魔物……テオの言う事は、的を得ている。
「あ」
ぶちぶち文句を言いながら飛んでいたパルは、小さなオアシスを見つけた。
1週間もすれば消えてしまうような小さなオアシス。
まだ誰にも発見されてないであろう水たまりは、パル達3人と砂蜥蜴4頭を潤すには充分な大きさだ。
「らっき♪夜には着けそうな距離ね♪」
パルはくるりと宙返りすると、仲間の所へ戻って行った。
「お前、そのまま飛んでった方が速いんじゃないか?」
帰ってきたパルに報告を聞いたテオは、もっともな意見を口にする。
「ん〜…そうだけど〜一応、リュディとパーティー組んでるし」
パルが人間のふりをしているのは、獲物を捕まえ易いようにだと思っていたが、それだけでは無いようだ。
「そもそも、何で魔物なんかと旅してんですか?」
「魔物なんかって失礼〜」
パルの突っ込みは無視しつつテオはリュディを見ていた。
「……利害の一致……」
この2人の間にある利害とは何だろう?とは思ったが、リュディは口を閉ざしてしまった。
元々お喋りではないが、態度からするに触れて欲しくない事なのだろう。