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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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夢、破れたり-9

「古川……いいのか……?」


「うん、あたし何でもする……」


涙ぐみながら、握った手に力を込める。


日常生活に支障があるなら、あたしが全て家事を引き受けてやる。


掃除、洗濯、料理……、なんなら下の世話だって!


女は覚悟を決めたら強いんだ!


あたしが駿河の顔を見ながら力強く頷いた、その時。


「おーっし、これで花火大会の日のメンバー確定な」


極上のスマイルを見せた駿河は、ケガをしていた方の手であたしの頭をポンポン撫でてきた。


……は?


ポカンと口を半開きにしたまま駿河の顔を見れば、ゆっくり椅子から立ち上がるとこだった。


そして、ニヤリと意地悪そうに笑う駿河は、


「こんなのただの擦り傷だから心配すんな」


と言うだけ。


「だって、あんた……さっきヤバイって……」


「ん、お前がばんそうこう貼ってくれたから治った」


そう言って指差した先は、傷口から見当違いのとこに貼られた、ばんそうこう。


さらには、ケガした方の腕をブンブンまわす始末。


「あ、あんた……騙したわね……」


「なんだ、人聞き悪い。お前がいないと確実にヤバイのは事実なんだから。何でもするっつったわけだし、来週の日曜は3クロで異論はねえよな?」


「やだ! やっぱり前言撤回する!」


「もうダメ。決定」


駿河はシシシと笑いながら、床に転がっているコーヒー豆の段ボールをひょいと持ち上げた。


そして呆気にとられたあたしを見て、それは意地悪な笑みを向けると、


「つーわけだから、花火大会の日は頑張ろうな」


と、バカにしたような言い方で、スタッフルームをあとにした。


パタンと閉まるドアと共にやってきた静寂。


……嵌められた!


あたしの怒りのボルテージはグングン上昇中。プルプル震えてくる身体。


駿河のあの去り際のしてやったり顔の憎たらしさと言ったら筆舌尽くしがたい。


このやり場のない怒りをもて余していたあたしは頭をガシガシ掻きむしりながら、





「うがーーーーっっっ!」





と、スタッフルームの外に聞こえてしまうくらいの大きな声で吠えた。


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