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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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夢、破れたり-6

「な、何よ! いきなりその失礼な発言は!!」


真っ赤な顔で睨みつけるけれど、駿河は至ってどこ吹く風。


「いや、鏡の前でヘンな顔してブリッコポーズとったりしてるし、『彼氏作って花火大会に行く』なんて叫んでたから」


ギャーッ!! やっぱりさっきの見られてたんだ!!


しかも、自分に入れた喝まで聞かれてた!!


もはや穴があったら入りたいどころじゃない。


このまま消えて無くなりたいくらい、いたたまれなくなったあたしは、少しでも消えてしまいたい願望を表すかのように、駿河の方を見ないでガバッと身体をテーブルに突っ伏した。


もう、コイツはデリカシーなさすぎ!


普通、他人のそんな恥ずかしい姿を見たのなら、見なかった振りをするのが優しさってもんじゃないのか?


しかも、さりげなくあたしのキメ顔をヘンな顔とか言ってるし!


恥ずかしさとムカつきで顔を上げられずにいるあたしの頭上で、フッと笑いが漏れる音がした。


「んで、その努力は実を結びそうなのか? 花火大会のお相手は見つかりそうなのかよ」


「…………」


「まあ、無理に決まってるか」


鼻で笑った駿河にムカついたあたしは、ガバッと顔を上げ、駿河の胸倉をつかんだ。


「う、うるさい! 花火大会までまだ日にちがあるし、ゆっくり相手を探すわよ!」


しかし、駿河は口を片側だけ上げて、意地悪そうな笑みを浮かべてこう言った。


「無理だって。その日、お前は俺と一緒に過ごすんだから」


そして、あたしの左手首をガッと掴んだ。


「え!?」


咄嗟にビクンと身体が跳ね、心拍数が一気に上がる。


間抜けに口を半分開けつつ彼を見れば、ニヤリと不敵な笑み。


な、何この展開!!


「す、駿河……、それってどういう意味……」


「だから、花火大会の日はまだ予定がないんだろ?」


掴まれた手をそっと指先でなぞられると、途端に全身から汗が噴き出してくる。


涼しい顔した駿河は、薄い唇をキュッと結んで黙ってあたしを見つめている。


あたしの知ってる駿河は、スパルタであたしにばっかり意地悪で、優しさのかけらもないドS男だけど、今はそんな駿河はどこにもいない。


あたしを見つめる駿河の眼差しがやけに熱っぽく見えたせいで、思わずそれから逃れるように視線を逸らした。




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