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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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夢、破れたり-3

「あがっ、あっ、うえっ、うわわっ!!!」


あまりの驚きに、あたしは出るはずの言葉もすっかりつかえてしまい、ゲホゲホむせかえってしまった。


涙目になるくらい激しくむせかえるあたしを、冷めた横目で眺めながら駿河はあたしの脇を通り過ぎようとする。


あまりに素っ気なくスルーしようとする奴が妙に癇に障って、あたしは駿河の肩を後ろからムンズと掴んで、


「ノックもしないで入ってくんのやめなさいよ!!」


と怒鳴りつけた、が。


「したっつーの。お前が自分の世界に入り過ぎてて気付かなかっただけだ」


駿河はそう言ってあたしをバカにしたみたいに小首を傾げた。


ムカつく……!!


「つーか、何しに来たのよ! 人の休憩時間を邪魔しちゃって」


「誰かさんが豆の補充しなかったから、代わりにやってんだろうが、アホ」


駿河はそう言って、ロッカーの上にある扉付きの戸棚を指差した。


咄嗟に気まずさで奴の肩を掴んだ手を緩めてしまう。


あ、そうだ……。さっき、コーヒー豆の補充を頼まれてたのにあたしってば里穂ちゃんの立ち振る舞いに見惚れてしまって、すっかり忘れていたんだ。


バツが悪くなったあたしは、思わず駿河よりも先に扉のツマミを掴んだ。


こればかりはあたしが悪い。言われた仕事を満足にこなさないなんて、ますますこの男にイヤミを言われてしまう。


休憩時間だけど、これくらいはちゃんとやっとこう。


そう決めると、あたしは爪先立ちになって、扉の奥に手を伸ばした……けれど。


コーヒー豆が入った段ボール箱は思いの外、奥に閉じ込められていたもんだから、なかなか手前に引っ張り出せない。


四苦八苦しているあたしを見かねたのか、駿河は小さくため息を吐いてから、


「いいよ、俺がとるから。どけ、チビ」


と、あたしの肩をグイッと掴んだ。


もう、ホントコイツは一言多い!


確かに180センチはある駿河から見れば、あたしはチビにしか見えないだろう。


けど、女の160センチはチビとは言わないんだよ!


あたしよりちっちゃくて可愛い里穂ちゃんにはそんな暴言吐かないクセに、どうしてコイツはあたしに対して必ず悪口を添えてくるんだろうか!





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