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これから
【青春 恋愛小説】

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これから-1

屋上から流れ行く雲を眺める。退屈な授業を抜け出して、とりあえず屋上に来てみたものの、やることがなくて苦笑する。
野球部は、今年が最後の大会だからと夜遅くまで部活動に励み、クラスの奴らは進路を実現するためにと勉学に励む。

中途半端だなぁ…。床に仰向けに寝そべりながらふと思う。やりたいこともなく、周りに流されやすくて、自分の意思は貫けない。
しかし、自分は他の奴らとは違うなどと、心の片隅で思っている。
キィ…。
階段へと続くドアが開く。今は授業中なので、普通は人は来ないはず。ドアが開くと、女の子が一人出てきた。お互いに目が合う。
「またサボってんの?いつもいつも飽きないね」
「お前だってよく来てるじゃないか。お互い様だろ」
二人で空を見上げる。心地よい風が過ぎていく。
「みんな偉いよね。もう将来に向かってるのに、私は全然解んない」
彼女は大仰に肩をすくめて見せた。
「俺もだ。よくもまぁ、未来のために勉強出来るもんだと感心するよ」

屋上で会った時にするのは、お互いに愚痴の言い合い。二人とも一緒の弱さを持っている。目の前に迫る現実、止まらない時間。何度も逃げたいと思った。けど、逃げ場所なんて存在しない。
やっていることはただの現実逃避。解っている。そんなことは解っているんだ。


「…ねぇ、聞いてた!?」
彼女の一言で我に帰る。どうやらなにか言っていたらしい。
「ごめん、聞いてなかった。で、なんだって?」
「公園に行こうよ!今日みたら凄い可愛い犬がいたの!」
「どんなの?」
「おっきくて、ふさふさしてるの!」
「なんだそりゃ」


二人で学校を抜け出す。微妙な罪悪感が襲うが、そんなのは関係ない。隣の彼女はもう待ちきれない様子だ。犬がもういないということを考えていないのだろうか。
俺たちの行動は、周りから見ればただの甘えだろう。馬鹿なこととは解っている。


「あ〜…いなくなってる」
「残念だったな」
彼女は心底残念がっている様子だ。
今更学校に戻ってもしょうがないので、二人で公園を散歩しながら時間を潰す。

「ねぇ…?」
不意に彼女が口を開く。
「なんだよ」
「いつまでも、このままじゃいけないよね?」
一瞬何のことか判らなかった。
「…なにが?」
「将来のこと」
「なんでいきなり…」
「わたしも、今のままじゃいけないってわかってる。進みたいの、これからに」

なんか、聞いてて息苦しくなった。自分と同じ悩みを彼女は持っているのに、それなのに前に進もうとしている。

「だって、将来なんてわからないじゃんかよ。わからないのに勉強しなくちゃならないのか?」

「今から将来についてなんて考えてる人はそうはいないでしょ、私達みたいな人の方が多いよ。きっと」

その通りだ。今から将来を考えてる奴なんかそうはいないと思う。夢、目標、そういうものを具体的に持っている奴らだって挫折するのだ。俺のような奴は精々適当なところで折り合いをつけてしまう。妥協してしまうだろう。


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