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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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この夏こそは-6

「休憩いただきましたあ〜」


そんな折、天使のような笑顔を見せながら、カウンターに入ってきたのは、ついこないだ入ってきたばかりだという、新人スタッフの松本里穂(まつもとりほ)ちゃん。


短大1年生だという里穂ちゃんは、ちっちゃくて、守ってあげたくなるような、かっわいいタイプの女の子。


ゆるーくかけられたパーマをポニーテールにして、現れた白いうなじにノックアウトされた男性スタッフは多数。


彼女がニッコリ笑えば、周りの空気が花が咲いたみたいにパアッと明るくなって、こういう女の子こそ癒し系なんだと思う。


しかも、仕事ぶりもすごくデキる。


一度言われたことはちゃんと頭の中に入ってるし、言われなくてもメモを取るほど仕事に対して真面目だし、実はあたしもたまに里穂ちゃんにわからないことを訊ねることがあったりする。


そんな彼女が、スウィングのアイドル的存在になるのはもう、定められた運命の如く明らかだった。


しかも、このアイドルが彼氏募集中だと知らされた日には……。


そして、不満その2。


うちのスタッフは恋人がいる率が異常に高い。


というか、恋人がいないのはあたしと、駿河くらいのもんだった。


そして常に彼氏が欲しいと喚めきたてるあたしに、スタッフのみんながみんな、「お前は無理」ってバカにしてくるのだ。


そんな恋人いない組に割って入ってきたのが、里穂ちゃんだ。


里穂ちゃんが「彼氏いないんです」と言えば、彼女持ちのスタッフすら「オレ、立候補していい?」なんて半分本気の笑えない冗談をかます。


ちなみに、あたしが「彼氏いないんですぅ」なんて言えば、「御愁傷様」と合掌される。


この差は一体何なんだ? ってくらいひどい扱いを受けるあたし。


絹子曰く、「あんたはそういうキャラだから」ってことらしい。


明るくてノリのいい、スウィングのみんなは大好きだけど(駿河は除く)、この扱いだけは大不満なのだ。


あたしだって、年頃の乙女。人並みに恋したいんだっつーの!


里穂ちゃんの愛くるしさに、密かに対抗意識を燃やしつつ、誰に見せるわけでもなくアヒル口を作って、目をパッチリ開けていたら、


「ホラ、古川。次休憩だ。そんなタコみてえな顔してないで早く行け」


と、駿河に言われた。










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