この夏こそは-4
あたしのバイト先、「カフェ・スウィング」は、店長と社員1人と総勢20名程のアルバイトでこの店をまわしているんだけれど、学生アルバイトが多いせいか、とにかく賑やかでワイワイ楽しい。
あたしがここに入ってそろそろ半年になろうとしているけれど、先輩バイトの絹子にタメ口を聞いても許されるほどみんな仲良し。
まあ、駿河に対してタメ口なのは、違った意味なんだけれど……。
とにかく、こんな居心地のいいアルバイトで、毎日充実した日々を送っていた。
……二つほどの不満を除いては。
「……小夜、小夜!!」
絹子に脇腹を小突かれたあたしはハッと我に返る。
見ればカウンターの向かい側にさっき入ってきたサラリーマンが財布の口を開けて待っている所だった。
しかもすでにトレイにはアイスコーヒーとタマゴサンドが用意されていて。
あたしは慌ててレジを打ち始め、
「アイスコーヒーとタマゴサンドですね、380円になります」
なんとかいつものペースでお客さんからお金を受け取った。
トレイを持ったサラリーマンは、レジから離れた窓際へと歩いて行った。
そして、そのサラリーマンに頭を下げる駿河の姿が目に入る。
やがて駿河は頭をゆっくり上げてから、あたしの方を向いてバーカと口パクしてからフッと笑っていた。
カッと頭に血が上るあたしは、駿河に対して思いっきりあっかんべーをしてやる。
そう、不満その1。
スウィングの営業時間は、朝7時から夜の11時まで。
あたしは昼間は大学に通っていることもあり、基本は遅番。
フリーターの皆さまが早番、学生組は遅番の組み合わせで成り立ってる。
でも、早番で入ってくれるアルバイトが足りないんだって。
情報誌なんかにも募集をかけたりはしてるらしいんだけど、時給が安いせいか、早番希望のフリーターさんが入ってこない。
となると、早番は店長と社員さんでまわすことが多くて、遅番は比較的人員に余裕があるので、アルバイトの責任者でまわしている。