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It's
【ラブコメ 官能小説】

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△△-3

有沙がいなくなってから、優菜はおかしくなってしまった。
『五十嵐湊と結婚して、有沙の墓参りに行く。有沙はずっと応援してくれてるから…』
と呪文のように毎日唱えていた。

「優菜、やめなよ…」
「止めるの?殺すよ?」
ポケットに入れたカッターをちらつかせ、友人を脅す。
目の前には怯える後輩。
「五十嵐くんに近付かないで」
「は…はい。ごめんなさい…」
後輩は泣きながらその場を去っていった。
「優菜!」
ハナこと花井早希が優菜の肩を掴む。
「こんなことしたって有沙が喜ぶわけないでしょ!」
優菜はハナを睨み付け「あんた殺されたいの?」と囁いた。
「…っ」
この目は本気だ。
早希は何も言えずに黙りこくった。
優菜に逆らえば、自分の命が危ない。
3人はそう思い、優菜の『五十嵐湊略奪作戦』に協力せざるを得なくなっていた。

湊が彼女と別れたと噂を聞きつけた高校3年の春、優菜は湊と同じクラスになり、放課後は毎日廊下で待ち伏せした。
「あ、い、五十嵐くん!」
「あ?」
「今日、空いてる?」
「わり。こいつらと遊ぶんだわ。じゃーな」
湊はそう言うと、一緒に教室から出てきた仲間たちと楽しそうに話しながら階段を降りて行った。
それが何度か続いた頃、優菜の耳に訃報が届いた。
『五十嵐湊に彼女ができた』
えっちゃんこと長谷川絵里からの情報だ。
「どこの誰?」
「あ、えっと……隣のクラスの子」
「名前は?」
「丸山唯」
優菜は「そう」とだけ言い、席を立つと教室から出て行った。
3人も目を合わせ、後を追いかける。
「どの子?」
「あの、ショートの子」
カズこと猪俣一美が指差した先には、ボーイッシュだけど女の子らしい可愛い子だった。
笑顔がとてもキュートだ。
それが逆にムカつく。
「五十嵐くんは髪の短い子が好きなのかな」
「さあ?」
「いつもショートの子と付き合ってるじゃん」
「別に関係ないんじゃない?」
優菜は数日間、丸山唯の観察を続けた。
いつも放課後は湊と一緒に帰っていること、クラスでは人気ナンバーワンの女ということ、頭はそんなに良くないことが分かった。
「貧乳のくせに」
「ははっ、貧乳って」
ある日の放課後、誰もいない教室で4人で話す。
優菜の嫌味に一美が笑う。
「別れさせたいなー」
「えっ…」
「ねぇ、どーやったら別れると思う?」
「……」
優菜の言葉には誰も答えなかった。
「何か言ってよ」
「あ…い、嫌がらせとか?」
絵里が小声で呟いた。
「嫌がらせってどんな?」
「わかんないよ、そんなの…」
「ハナは?何か思いつかないの?」
「へ?あた、あたし?……教科書捨てるとか?」
「あははは!それちょー面白い!やろやろー」
爆笑する優菜に、3人は怯え、言われた通りにするしかなかった。
すぐさま隣の教室へ行き、丸山唯の机を探し出して教科書をゴミ箱に捨てた。
「今日はこれくらいでいっか」
「……」
「他に何かいい案があったら教えて。じゃ、帰ろー」

翌日から優菜は、狂ったように動き出した。
放課後になると丸山唯の机に『死ね』と落書き、上履きを泥につけて画鋲を入れたり、ロッカーに飾ってある友達との写真をズタズタに切り刻んだ。
「ほら、みんなもやりなよ」
殺気に満ちた目でそう言われる。
逆らえば殺される。
3人は言われるがままに優菜に従った。
1週間が経った頃、丸山唯が犯人に気付いたのか「佐山さんいる?」と教室までやってきた。
「なに?」
「あたしの物めちゃくちゃにしたの佐山さんでしょ?分かってるんだよ」
「へぇ、だからなに?」
「あたし、佐山さんに嫌なことした?したなら謝るけど…」
優菜はニヤッと笑い「五十嵐くんと別れてよ」と呟いた。
「え…」
「別れるまでやめないから」
「…別れるわけないじゃん!意味わかんない…」
丸山唯は怒って去って行った。
優菜は怖気づかない丸山唯に苛立ちを覚えた。

「お前さ、いい加減やめろよ」
丸山唯から話を聞いたのか、翌日湊は優菜を放課後の教室に残してそう言った。
「だって…」
「だってもクソもねーだろーが。ふざけんな」
五十嵐湊は怒っている。
でも、こうして2人きりで教室に残っているというシチュエーションを考えるだけで、今までにない幸福感に支配される。
「ねぇ、なんであたしじゃないの?」
「は?」
「あたしの方が前から五十嵐くんのこと好きだったんだよ?」
「だからなんだよ…」
「別れてよ…丸山唯と別れてよ!」
優菜は泣きながら湊に怒鳴った。
「有沙はずっと応援してくれてるのに……あたし…有沙の気持ちに応えられないじゃん!」
「山口は関係ねーだろ…」
「関係ある!」
有沙の名前を出すと、湊はどもってしまった。
「もう、いい。今度こんなことしたら、ただじゃ済まさねーからなお前」
湊はリュックを引っ掴み、教室から出て行った。
1人残された優菜は泣きながら隣の教室へ行き、丸山唯の机を窓の外へ投げた。
死ねばいいのに、あの女…。


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