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パレット
【純愛 恋愛小説】

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PINK color-6



・・・・なんでだろう。凄く、デジャヴを感じる。
俺は、この話に覚えがある。いや、覚えがあるなんてモノじゃない。

「これ、続きは!?」
「・・まだ出来てないからって、猫ちゃんが持ってるよ。」
「美桜が!?」
「・・・慧、どうしてこれに続きがあるなんて思ったの?」


そんなの決まってる。
これで終わったら、中途半端だ。終わってない。ワンコの言葉があるはず。
そういう言葉で返すつもりだった。でも、それより先に言葉が出てきた。

「だって俺がこのあと・・っ!!」

そう言ったあとで思い出した。これは、俺たちの出逢い。
細かな背景は違うけど大体が同じだ。このあと、俺は・・・。
それを思い出した時、俺の頭に何か入ってくるモノがあった。
すっかり忘れていた。

「・・猫ちゃんのところ行って、残りのページ貰って来てくれる?」

恭弥先輩が優しい笑顔を浮かべて、俺に自転車の鍵をちらつかせる。

「・・・あぁ!」

狙ってたような気がしてなんか釈然としないけど、この絵本の続きを読みたくて。俺の言葉を、アイツの中ではどう受け止めたのか知りたくて。アイツに、会いたくて。
俺は先輩の手から自転車の鍵を奪い取った。



かつてないスピードで自転車を漕ぎながら、俺はふと思い出した。簡単に絵本で描かれた俺たちの出逢いを。

アイツは確かに生まれた時から遺伝のものではない藍色の目をしていたらしい。
それが原因で両親から疎まれて、周りの他人からは呪われた子だなどの迫害まがいのことを受けて生きてきた。アイツ自身もその事が原因で他人と距離を置くようになっていた。
だから絵を描くことは、アイツなりの孤独からの逃げだったのかもしれない。

俺は小学校に上がった時に、美桜と同じクラスになった。
比較的、明るい性格だった俺は自然とクラスの仲間と交流を持った。ただ一人、他人と関わろうとしない美桜を除いて。
勿論すぐに興味は持った。その頃から美桜は、その、・・可愛かったし。
だけど周りが「近づかない方がいい」とか言って俺を止めた。その時にでも振り切って傍に行けば良かったんだけど・・。

しばらくして、やっと俺は美桜に話しかけに行った。周りがいくら止めても、自分の中に湧き出た好奇心を止められなかった。
どんな奴なんだろう。声はどんななのかな。口調は?そんなことばかり頭を巡った。
体育の授業で、わざわざ50mのタイム計測のペアを組んだ。
そして、話しかけに行った。

『ゆきはら、タイムどうだった?』
『・・・・別に・・』

目を見て話さない美桜にムカついて、顔を覗き込んだ。
驚いた美桜が慌てて顔を逸らす。でもその一瞬で俺は見た。美桜の藍色の目。
少し驚いたけれど、その色が綺麗だったから、思わず両手で美桜の顔をあげさせて、俺と見つめ合う形に。
驚いている美桜に構わず、俺は綺麗。愛される色と言った。それに対して美桜は泣きながら今までの辛さをぶちまけた。丁度、ネコと同じように。
その姿を見て、俺はこの子を一生守りたい、傍に居たいと思った。
ただ愛されたいと願う少女を、自分が愛したいって。

その気持ちを、俺はどこかにやってしまったみたいだ。
長い年月が経てば経つほど、自分との関係が“幼馴染み”で定着していくのが怖くて。
少しでも“幼馴染み”よりも近い存在で居たかったハズなのに。
自分の“愛したい”という気持ちは、何一つ変わってないハズなのに。
好きという形が変わっただけなのに、何故こんなにも難しくしてしまったんだろう。
俺は、ヘタレなんかじゃない。ただの・・、大馬鹿だ。


やっとの思いで着いた美桜の家に、自転車をわざわざ止めるのさえも鬱陶しくて。
自転車を乗り捨てるように降りると合鍵を使って勢い良く美桜の家に入った。

美桜は、簡単に見つかった。
というより、俺を待ち伏せていたようで・・玄関に繋がる廊下で座り込んでいた。
思わず動きを止めてしまう。ここで、待っているなんて想像もしてなくて。
閉じられている目を見て、俺は慌てて靴を脱ぎ美桜の前にしゃがむ。
美桜の細い肩に手を置いて、美桜に呼びかける。

「美桜!お前、こんなところで、風邪ひくから!」

眠ってはいなかったのか、俺の呼びかけで身じろぎをしてそっと目を開けた。
そのまま、俺の顔を見上げた。藍色の目が、俺を見つめる。

「・・・慧」
「何やってんだよ!こんなところに居たら風邪ひくだろ!?」
「・・・・」
「ほら、とりあえずリビング行こう。立てるか?」

身体を気遣って、立たせようとした俺の手を美桜が掴んだ。








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