イタダキマス-7
テオは右手を差し出し、パルは満面の笑顔でその手をぱしんと叩いた。
砂漠の旅で一番困るのは昼間と夜の寒暖の差だ。
昼間は50℃を超える灼熱地獄なのに対し、夜は氷点下の極寒地獄になる。
なので砂漠の旅は気温が上がり始める朝方から昼前、一番暑い日中は休憩して夕方まで動く事になっていた。
3人が出会ったのが丁度、日中の休憩時。
それから夜営地まで移動するのにテオは歩くと言ったのだが、砂蜥蜴がそれを許してくれなかった。
それどころか、ぜひ自分の背中へとテオの奪い合い。
しょうがないので一番小さい2号さんに乗せてもらい、荷物は一番大きい旦那さんがまとめて持つ事に。
荷物は持つから次は自分ね!と言わんばかりの旦那さんの態度に、テオは苦笑するしかなかった。
「猛獣使い?」
夜営地を見つけた3人は砂蜥蜴から荷物を降ろしながら話す。
「ん〜…なんでか昔っから動物に好かれるっつうか……撫でてやると大抵は大人しくなるな……」
どこらへんを撫でてやると喜ぶとか、何となく分かるのだ。
「なんか便利」
「いやぁ、野生の奴にはやっぱ効かねぇしそうでもないぜ?」
それでも、率先して人間を手伝う砂蜥蜴は可愛くて便利だ。
そうやって防寒対策を整え、休む所を作ると早々に食事を取って寝る……砂漠の朝は早いのだ。
始めに火の番を名乗り出たテオは、教わった事を頭の中で復習しながら手持ちの道具の点検をする。
(運が巡ってきたな)
砂漠で旅慣れた2人組に会えるのなんて凄い確率だ。
しかも、2人共女性……やはり、一緒に行動するなら目の保養は出来た方が良い。
夜も半分が過ぎた辺りでパルを起こして交代してもらう。
「パル?」
テオは毛布にくるまったパルの肩を揺らし、小さく声をかけた。
すると、にょきっと腕が伸びてきてテオの首に絡んできた。
「わっ……っ?!」
首を捉えられたテオは勢いのままにパルにのし掛かり、彼女と唇を合わせる羽目になる。
「んっ?!んん?!」
慌てて身体を離そうとしたのだが、パルの腕が許してくれない。
それどころか、脚まで絡みついてきてテオはゴロンと転がされてしまった。
「ん〜♪」
パルは嬉しそうにテオの唇を貪り続ける。