イタダキマス-2
身体は小さいクセに怪力な父親は、少年を地下室に放り投げてバタンと入り口を閉めた。
「話ぐらい聞けよ!」
「うっせぇ」
少年の雄叫びを無視した父親は、ドアの前にドーンと箪笥を移動させ完全に出入口を塞ぐ。
「分からず屋!馬鹿親父!チビ!犬!……」
何度か喚いた少年は、疲れたふりをしてニヤリと笑った。
どうせ反対されるだろうと思って、抜け道を作っておいたのだ。
コソコソと床板を外し、そこに置いてあった荷物を引きずりだす。
大きなリュックの中には、冒険に必要であろう様々な道具が入れられていた。
ナイフ、ロープ、着替えに保存食に薬草などなど。
そのリュックの下には更に奥に続く穴。
少年は脚から穴に滑り込んで、リュックを引き寄せた。
そして、外した床板を元通りになるようにセットする。
「じゃ、いってきま〜す」
パタンと床板を戻した少年は、狭い穴をずりずりと這い進み、冒険の旅に出かけたのであった。
―――――――――――
それから数ヶ月……東へ東へ移動してきた。
とりあえずの目標はここら辺で一番大きな都市エザル。
そこで仲間を見つけたいと思っていたのだが……途中にある砂漠越えは思った以上に厳しいものとなった。
「やっぱ、熟練者と一緒じゃなきゃ砂漠越えは無理だったかなぁ」
節約してきた水も食料も底をつき、体力を温存する為に涼しい時間帯だけ動いていたが……そろそろ、あの世への扉が開きそうだ。
「だからってここで死んだらあのチビ親父にどんだけ笑われるか……それだけはムカつくなぁ……」
母親は多分、激怒するだろう……もしかしたら、死体を引きちぎられるかもしれない。
そんな事を考えて空腹と喉の渇きを誤魔化していたら、砂を踏む音が聞こえてきた。
その音は複数……砂蜥蜴の群れか?と考えたが、砂蜥蜴は群れない……サンドワームとも考えたが足が無い生物なので足音がするわけない。
少年は岩影に隠れたまま足音の主が来るのを待った。
暫くすると、陽炎の向こうに砂蜥蜴の姿が見えてきた。
数は4頭……砂蜥蜴は群れないとか言ったの誰だよっ、心の中で罵倒しつつ気配を消す少年。
足音はだんだんと近づき、岩影の直ぐ近くで止まった。
(嘘だろぉ〜)
4頭の砂蜥蜴相手に勝つ自信は無い。
ここは逃げの一手か?!と、足を踏み出した時。