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朱炎の記憶
【熟女/人妻 官能小説】

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朱炎の記憶-12

 男がハルミの家に居着くようになると、俺はハルミの家には近寄らなくなった。
 二階から覗けたハルミの屋内は、もう覗けなくなっている。
 都会に出ようとふと思った。それで、高校受験はこの田舎から離れた高校を受けた。
 幸い成績は悪くなかったから問題なく受験に受かって、俺はこの田舎から去った。
 それから、ハルミがどうなったかは知らない。
 そもそも、俺にとって、彼女はどういう存在だったのだろうか。
 彼女でも、恋人でもない。だが、あの男との交わりを見た時は心の何処かがチクリとした。
 童貞を捨てた相手、それだけなのだろうか。
 あれから二年以上経った今でも答えは出ていない。
 ただ、あの獣のようになったハルミの姿を思い浮かべながら、時々自慰をするだけだ。


「なあ、お前顔はまあまあいいからさ、誰か女の子誘って来いよ。プールに行こうとか言ってさ」
「馬鹿言え、もうそろそろ受験だろう? 誘っても無理だよ」
「一日くらいは、いいだろうよ。それに俺も童貞のまま高校卒業なんて嫌だよ。お前はいいのか?」
「俺は、別に――」

 俺はあの日以来、女に対して少々奥手になったかもしれない。
 女の裏の顔というものを、垣間見てしまったからだろうか。
 だが、よくよく考えれば裏の顔など俺にもあった。
 今でこそ真面目にしているが、女を脅迫してヤッてしまおうとしたのが俺なのだ。
 人には、誰しも裏の顔がある。
 しかし俺にも、いつか魂と魂が結びついたような、あんなセックスが出来る相手が現れるのだろうか。
 悪友がしつこく俺を奸計に巻き込もうとしている。
 だが、たまには乗ってやってもいいかもしれない。結果がどうなるかは分からないが――
 悪友の誘いに渋々了承すると、彼の顔が屈託なく嬉しそうに笑った。
 夏の暑い日、俺は苦笑しながら、彼の奸計を聞きながら歩いていた。


−完−


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