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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み6 〜桜、舞う〜-2

 お泊りすらも、制限を受けてしまう。
 いくら何でも両親や竜彦が家にいる時に堂々と泊まるというのは、常識的に見ていかがなものか。
 そんな理由があって、二人が快楽と共に愛情を交換する行為の回数が、大幅に減っていた。
 いちおう美弥は帰ってきた巴とその夫……兄弟の父である高崎竜臣(たかさき・たつおみ)に龍之介からきちんと紹介して貰って交際している事は知らせてあるので、多少遅い時刻まで部屋でののんびりまったりデートは見逃してくれているが。
 息子の体の変調の理由を当然ながら知っている竜臣は、『この人と交際してるんだ。その……将来の事も見据えて』という龍之介の言葉に、巴から美弥の存在を聞かされていたにも拘らず、ひどく驚いていた。
 たとえば母親の巴に触れば、悲鳴を上げるわジンマシンは出すわ胃がでんぐり返るような吐き気を催すわと、女性の接触をこれでもかと言わんばかりに拒否していた息子が嬉々として恋人に触れるのを、竜臣は目撃しているのである。
 それは美弥が帰る間際の玄関先でぴったりくっついて唇を触れ合わせている時だったり、食事時にかいがいしく互いの世話を焼いている際に指先などが触れ合っても、龍之介が悲鳴を上げなかったりした時だ。
 かなり親密なその様子からすると体の関係も生じているのだろうし……そう考えると、あんな目に遭わされたというのに龍之介が女性を愛する能力そのものには何の異常もきたさなかったのは、竜臣にとっては非常な驚きだった。
 しかも美弥は、この関係にきわめて満足がいっているらしい。
 龍之介を垣間見る時の信頼しきった眼差しや体の方々から現れる無防備さが、それを物語っていた。
 パートナーが心も体も満たされていないとこんな表情をさせるのは難しいと、竜臣は思っている。
 そんな理由があって、竜臣は紹介された当初は色眼鏡を掛けて見ていた美弥の事を、程なくして息子に必要な人物だと認めざるを得なかった。
 ……誤解のないよう説明させていただくが、竜臣は息子達の恋人に対してやや神経質にならざるを得ないのである。
 息子達がまた下手な女性を引き当てて苦すぎる思いを味わう事は、父親として……また家族として、断固防がねばならないと考えていたからだ。
 そしていったん息子と美弥の関係を認めると、今度はその関係を維持させるのにやぶさかではなくなる。
 その一環が、今週末の家空けだった。
 竜彦がこの二人に協力していたのは目に見えているし、そうなると無人の高崎家で情交に耽っていたのは、想像に難くない。
 自分達が帰ってきた事で今まで奔放に過ごしてきたのであろうその時間に歯止めをかけてしまった事も、見当はついている。
 今まで自由に過ごしてきた分、いきなり長期の禁欲を食らわされるのはかなりきついと思われた。
 龍之介のアルバイトは続いているものの兄ローンの返済にほとんどを充てているし、その辺で『休憩』ばかりするのも不経済だと竜臣は考えている。
 そこで本日、竜臣は巴を誘ってちょっとした旅行に行く事にした。
 どこぞの旅館に予約を入れ、金曜の夕方から日曜の昼頃まで家に帰ってこない事を、竜彦にも龍之介にも伝えてある。
 父親から『恋人を呼んで思い切りヤれ』とあからさまに言われているようで面白くないが、かといってせっかくのチャンスを潰す気は毛頭なく、龍之介は美弥を呼び付けた。
 そして回数が激減したせいで溜まりに溜まった欲求不満を発散すべく、ベッドに潜り込んだ訳だが……異変は、ここで起こる。
 欲求不満を、美弥は溜め込み過ぎていたらしい。
 何はなくともまず一回と、龍之介が愛撫もそこそこに秘部への侵入を果たし、腰を使い始めた時の事だ。
 普段ならありえない言葉を美弥が発し、主導権を握ったのである。
 そしてこれまた普段ならありえない動き方を……いつもなら二人で一緒に気持ち良くなるための行為を、一人でやり始めたのだ。
 それに気付いた時はまるで自分が大人の玩具扱いをされているようで悲しかったが……自分はしょっちゅう理性をプッツンさせては美弥を襲って乱暴な行為に耽っているし、裏を返せばこんな風になってしまわざるを得ない程に美弥へ我慢を強いていたのである。


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