序章-18
「これが……女の人の……」
「そう……ここから、貴方は産まれたのよ……」
伝一郎は這うような体勢で、初めての女性器を食い入る様に見詰めた。
男と異なる複雑怪奇な形状や、嗅いだことの無い酸味がかった匂いは、少年の昂りを更に押し上げる。
「……ここが、あなたの物を入れるところで……こっちは、女が一番感じるところ……」
菊代は自ら秘裂を開いて見せて、女性器ひとつ々が担う役割をわが子に講釈した。
「……じゃあ……舐めて……」
更に大きく股を広ろげ、愛撫する様せがんだ。伝一郎は蜜に吸い寄せられる蜂の如く、母親の股へと分け入り、舌を突き出して秘裂に這わせた。
「っくう!……んんっ!……そうよ……あんっ!……もっと奥を……」
わが子の舌が敏感な部分を責め立てる。菊代の身体を狂おしい程の快感が駆け廻り、思考さえも儘なら無い。
「あっ!……っんあ!そこを!……」
狂った様に声を発して悶え苦しむ母親の反応に、伝一郎の興奮は更に高まり「もっと苛めたい」とする、異様なる思考が心を支配する。
伝一郎の指が秘裂の端、包皮に包まれた“女が最も感じる部分”である肉芽を剥き出し、口唇で直接吸い付いた。
「あああっ!……いやあ!……っんああ!」
肉芽への責めに菊代は、身をがくがくと痙攣させ、気違いの様な奇声を挙げ続けた。
その余りの豹変ぶりに伝一郎は怖くなり、吸い付くのを止めてしまった。
「も、もう……いいわ……」
菊代は激しく息を喘がせながら、身体を起こして伝一郎を仰向けに寝かした。
「教えてあげるわ……女を……」
そう言って再びわが子の陰茎を愛しげに咥わえ、舌で亀頭の笠をまんべんなく何度も舐め上げた。
舌先に陰茎の硬さが増すのを感じながら、彼女はふと、この先に待つ異常な結末を思い浮かべる。
──今なら、まだ間に合う。このまま射精させれば、少なくとも今夜は、おぞましい行為に発展する事も無くなる。これからも、誤魔化す事は出来るかも知れない。
そう考える内に彼女は気付いた。“自分自身がそれを望んでいない”事を。
菊代はゆっくりと身体を起こした。唾液にまみれた陰茎は、薄明かりの中で妖しく光り、自己主張を繰り返す。
菊代は伝一郎に跨がると、亀頭を花弁に当てがった。
「ふんっ……くっ……」
腰が徐々に沈んで行く。亀頭が花弁を押し広げる痛みにより、菊代は思わず顔をしかめる。
心では情交を受容しているのに、久しく、その機会を断っていた事で、身体が“濡れる”のを拒んだのだ。
痺れるような痛みの中で、菊代の心は、初めて契りを結んだ日の事を追憶となって甦らせた。
「ああ……か、母さま……」