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パック旅行と受賞映画
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逃げて来た女-2

私は倉庫に戻ると時間まで勤務しその後帰宅した。

私は車に積んだダンボールから女を出して、とりあえずアパートの部屋に入れた。

それは大変危険なことだった。

だが宿泊施設まで手が廻っているということになると女の居場所がない。

とにかく今夜はここで泊めて、明日は会社を休んで安全なところまで送ってやるしかないと思った。

人助けというのは実に面倒だし、おまけに命の危険が伴うことが多い。

だが目の前で助けを求められてそれを見捨てたなら、そのことが後々まで引きずるような気がする。

だから助けることにした。

女はどう見ても組長から逃げ出した情婦とかそんな風には見えない。

それで最低限で良いから事情を聞くことにした。

「芸能プロダクションに所属してるタレントですが、興行元の社長に挨拶に行かされて、それが刺青をしたやくざ者だったんで逃げ出して来たんです。

もう事務所も承知の上で仕組んでいることなので、そこにも戻れません。

タレントをやめて故郷に帰りたいです。

明日県外に行って列車に乗りたいと思います」

私はそういう世界のことはよくわからないのでただただ驚くばかりだった。

だが向こうもそれだけ用意周到だったら故郷にも手が廻っているのではと聞いてみた。

すると女はにこっと笑った。

「私も馬鹿ではありません。

何か胡散臭い事務所だったので本籍とか出鱈目を書いて登録していました。

そのチェックも禄にしない所だったので、それが幸いしました

今頃は偽の故郷行きの列車やバスを見張っていると思います」

私はそういうものかと思った。

彼女は夕食を作らせてくれと言った。

冷蔵庫にあるもので3品くらい器用に作ると一緒に食べながら話をした。

「佐々木さんは映画とかはご覧になるんですか?」

私は笑った。映画と言ってもDVD専門。

格闘技関係ばかりですよ。ジャッキーチェンものとかチョコレートファイターとか。

後は軽いものばかりで、見た後忘れてしまうような……そんなものばかりです。

彼女は映画の題名を幾つか並べ立てた。

「それなら例えば今言ったような映画はごらんにはならないですね? 

こういうテーマものは内容が重いですし、きっと佐々木さんなら胃にもたれて消化不良をおこすでしょうね」

私はもう一度言ってくれと言った。だが笑って彼女は首を振った。

「良いのですよ、こういうのは覚えなくても。

普通の名作を好む人達でも見向きもしないものですから。

例えばの例であげただけですから」

私は彼女が芸能関係を目指したのも、結構映画に造詣が深かった為だと思った。

それがとんでもない芸能プロに引っかかって夢を壊されたのだと。

私は彼女をなんと呼んだら良いのか聞いた。

彼女は名前をミキと言った。

「芸名は言わないでおきます。聞いても分からないと思うので」

ミキはそう言うと目の前で服を脱ぎ始めた。

下着姿になった彼女を見てその意味を悟った私は首を振った。

そんな積りはない。困っていたから助けただけで代価を求める積りはないと。

「もちろんわかってます。それでも私の気持ちを受け取って頂きたいのです。

危険を冒して命を助けて頂いたのです。ご好意に甘えたままでは一生の悔いが残ります。

それとも私の命も体もなんの値もないものなのでしょうか?」

私は首を振った。違う。それであなたが良いのなら私は喜んで受け取ろう。

ミキは下着姿のままベッドに向かった。私も下着姿になって一緒にベッドに潜った。

セミダブルの狭いベッドだったが、二人が抱き合うのには十分だった。

私達は何度も愛し合った。

命の危険を身近に感じた、その緊張感からかお互いに激しく相手を求めた。

朝目覚めた時、朝ご飯ができていた。そしてメモ用紙が残されていた。

私はそれを手に取った。

『これ以上ご迷惑をかけられません。ヒッチハイクで県外に出ます。

早朝なら警戒が緩くなっていると思うので。ありがとうございました。ミキ』


 


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