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THANK YOU!! ver.秋乃
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3




結局、午前中の授業をほぼサボって保健室で療養していた秋乃は保健室を出て教室に戻ってきた。
雅弥のノートから一枚拝借して描いた絵を持って。
チラチラと見られることに慣れた秋乃は何とも思わず窓際から2列目の一番後ろの席に座った。とりあえず、机の上にカバンを置いて、絵をファイルの中に丁寧にしまってからお弁当箱を取り出した。
カバンを元のように机の横にかけ直してお弁当箱を開ける。
すると、前の席に座っていたお下げの少女が振り返って恐る恐る声をかけてきた。

「あの、柊さん。保健室に居たって聞いたんだけど・・その、大丈夫・・?」
「ちょっ、紗耶香止めときなよ!」
「そうだよ、いくら学級委員だからって・・」

このクラスの学級委員でもある立橋紗耶香。一応秋乃を心配してくれているようだ。
だけど、周りに居る友達は慌てる。関わると、ロクなモンじゃないと。
まあ、秋乃は昨日まで冷たい言葉で返していたのだから、当たり前なのだが。
その様子に、いつも通りに返そうかと思ったが、先程自分は“受け入れる”ことに決めたのだ。“拒絶”は、しないって。

「うん。お腹痛かっただけだから。」
「あ、あ、そうなの・・?」
「・・え・・」
「声かけてくれて、その、ありがと」

少し微笑み、瑞稀たち程ではないが口調も和らげて言うと、紗耶香は驚きながらも安心した様子だった。
周りに居た友達が、いつもの秋乃とはかけ離れた姿に驚愕していた。
お礼を言うのは少し照れくさかったが、間違ったことではないし、言うだけならタダ。
照れて少し赤くなった頬を隠すように、秋乃は自分のお弁当を食べ始めた。
その様子を見て、紗耶香は勢いのまま、言った。

「あの、柊さん、お昼、一緒に食べません・・?」
「え?」

思ってもない提案に、秋乃は首を傾げた。それからしばらく時間が流れた。
周りに居た友達も最初は驚いて事の成り行きを見守ったが、元々全てが謎に包まれていて、強い境界線を引かれていた秋乃がお礼を言ったことで、少し薄くなった気がしたのか、思い思いに近くにあった椅子を運んできた。
そのまま秋乃の周りに円を囲むような形で座った。

「え、あの・・」
「いや、柊さんと話してみたくてさ」
「うん。先輩たちから嫌な噂聞いたりとかするけど、実際朝篠先輩とどうなってるのかも知りたいし!」

・・・どういう状況なんだろうか。これは。
少し言葉を返しただけで、こんなクラスメイトから話しかけられるとは思わなかった。
というか、こんなに簡単に行くなんて思っていなかった。

「ってことで!いただきます!」
「「「いただっきます!!」」」
「え・・あの・・・」

戸惑っている秋乃を他所に様々な質問が投げかけられる。
小学校を卒業してから一回も感じることのできなかった、くすぐったい気持ちに、秋乃は頬を緩ませた。

「・・いただきます」



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