投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

黒の他人
【ラブコメ 官能小説】

黒の他人の最初へ 黒の他人 9 黒の他人 11 黒の他人の最後へ

黒の他人<前編>-1

ピンポーン

ある雨の日の夜、時計は9時をまわりかけた頃。
突然、思いがけず部屋のチャイムが鳴り響いた。
来客なんて珍しいな?
そう思いながらドアを開けると、そこにはいつぞやの女──加奈の姿があった。

「……あんた確か」

濡れた傘を腕にかけ、俺の顔を見るや深々と頭を下げる加奈。
紺のリクルートスーツはクリーニングにでも出したのだろうか?
今日は淡い薄緑のスーツを着ていた。

「そ、そのっ この間は本当に失礼しましたっ」

そう言って恥ずかしそうに頬を染めながら、手に持つ袋を俺に差し出す。

「ん、なんだ?くれるのか?」

黙ってコクリと頷く加奈。
中をのぞくとそこには、新品のタオルと同じく新品のベッドシーツ。

「ああ、なるほどこの前の……」

俺は敢えてその先の言葉を慎んだ。

普通、行きずりの男の家にわざわざ舞い戻って来るか?
しかもご丁寧に汚したシーツの換えを持って来るなんて、
いくら自分の失態だからって、
放っておけばおそらく二度と会うこともなかろうに……

「……あがってくか?」

ビクリと肩を震わせながら、その場でもじもじと指を重ねる加奈。
そりゃあんな事があったんだ、躊躇うのはむしろ当然のことだろう。

俺はそっと指先で加奈の髪に触れてみた。
もちろん加奈は驚いた様子だが、うん、まんざらでもなさそうだ。

「安心しろよ?合意無しに襲いはしねぇよ」

合意無しに襲った俺が言える言葉だろうか?
むしろ合意があれば襲うぞと言ってるようにも聞こえかねない。

けれど加奈はその言葉に黙って頷いたかと思うと、消え入りそうなか細い声でこう返してきた。

「……お、おじゃまします」


黒の他人の最初へ 黒の他人 9 黒の他人 11 黒の他人の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前