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警鐘
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山荘にて-2

「お待たせしました」

 先ほどの女性スタッフだった。トレイにおさまりきらないほどの朝食が、美味しそうな匂いを運んでくる。

「うちは食事だけが自慢なんです」と彼女は冗談混じりに言ってみせた。

「私は食欲だけが自慢なんです」なんて私も切り返した。そしてお互いの顔を見合わせて、女笑いをする。
 ふと彼女の胸元を見ると、『庭朋美』と書かれた名札がついていた。

「ニワさん、ていうんですね。なかなか珍しい名字ですよね?」

「よく言われます」

 照れ臭そうに微笑むと、彼女はさらにつづけた。

「ここのワイルドガーデンズという名前は、この『庭』をもじってるんです。ひねりのない名前でしょう?」

 とんでもないというふうに私は首を横に振って、彼女に尋ねた。

「それじゃあ、あなたのご主人がオーナーをされているんですか?」

「一応そうですけど、まあ、趣味でやってるようなものだから。私はボランティアだと思ってやってます」

 そう言って彼女はウインクした。
 飾らない人柄と、羨ましいほど綺麗な容姿。笑うとのぞく白い歯が、その魅力に輪をかけている。
 年齢は私とそう変わらないだろうから、三十歳そこそこに見える。おそらく彼女目当てでここへ来る男性客もいるかもしれない。

「それではごゆっくり」

 彼女はそう言い残して、食堂の隅へと歩いていく。その方向にはトイレがあり、ついでにそのドアの前には、さっきの三毛猫が行儀よく座っていた。
 庭朋美(にわともみ)は三毛猫を抱き上げて、毛並みを撫でながらトイレに入っていった。

やっぱりここの猫だったんだ。ちゃんとトイレでするなんて、賢い猫だこと──。

 私は感心した。それはさておき、空っぽのお腹が猫撫で声で鳴いている。
 一人で食べる朝食はいつも、カロリーゼロを謳(うた)うダイエット食みたいに味気ないものでしかない。
 だけど温もりのある空間でこうしていると、一人の食事も悪くないなと思えてくる。
 私は自分の髪に指をかけ、両耳を出した。そしてピアスの穴に触れながら、今日はどんな色をつけようかと考える。

そんなことよりも今は食事を優先させなきゃ──。

 私はグラスの水で喉を潤し、「いただきます」のあとに料理に箸をつけた。

美味しい──。

 思わず笑みがこぼれた。火の通し方はどうで、調味料の分量はどれくらいなのか。そんなことを探りながら紙ナプキンで口元を拭っているときだった。
 テーブルに待機させておいた携帯電話が、メール着信を知らせるイルミネーションを点滅させた。
 彼からのメールにちがいないと直感した。

 二つ折りの携帯電話を開けると、待ち受け画面の時計が八時二十二分を示していた。着信メールのアイコンも出ている。
 これはきっと、私にとってのパンドラの箱になるだろう。しかし気持ちがどうにも止まらない。私は受信メールを開封した。

『オリオンさん、おはようございます。もう少しでこちらを出られそうです。それと約束の物も一緒に持って行きますので、オリオンさんが気に入ってくれたら僕も嬉しいです。それではまたあとでメールします』

 思った通り、メールの相手はノブナガさんだった。私は何度もそれを読み返した。だんだん頭の中が熱くなっていくのがわかる。


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