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想-white&black-
【女性向け 官能小説】

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想-white&black-N-6


しばらくして走っていた車が静かに止まった。

「どうやら着いたようだね」

隣に座っていた男の人が優しく微笑みながら窓の外を覗く。

着いたのは屋敷の敷地に入る門の前だった。

「ここで降ります。ありがとうございました。それと、本当に今日はすみませんでした」

頭を下げると男の人は気にしないでと答えてくれた。

穏やかで落ち着いていて、柔らかな笑い方が素直に素敵だという印象を残す。

それが見惚れるほどの整った顔立ちと相まって更に魅力を増している。

「しかしここで降りると言っても屋敷までは歩くと結構あるはずだろう?」

「ええ、まあ、そうですけど……」

確かに門から屋敷までは車でも数分はかかる。

いつも車での移動ばかりだったし、歩いたらどれくらいかかるものなんだろう。

「でも平気です。歩けない距離というわけじゃないですし」

私がそう答える彼が僅かに眉を寄せてが何かを考え始めた。

「……ちょっと待ってて。おい」

「はい」

彼が運転手に声をかけるとそのまま運転席から離れていった。

「あ、あの」

「気にしないで待っていて。大丈夫だから」

「はい……」

安心させるように笑った彼の優しげな口調に思わず頷いてしまう。

だがその一方で彼は何者なのだろうという疑問も膨らんでいく。

するとすぐに運転手が車に戻り、そしてハンドルをまた握り出した。

「門が開きます。お屋敷までお送り致しますので」

「ええっ?」

運転手の言葉に思わず驚きの声をあげてしまった。

楓さんの屋敷には誰かが訪れることは滅多にない。

それこそ以前隠れ見たお嬢様みたいによほど特別な人じゃないと……。

その時の光景を思い出して胸がずきりと痛むのを感じた。

本当にどうしようもないと自分が情けなくなる。

楓さんは家の中に他人を入れるのが好きじゃないとかで、人と会うときは自分が外へ出ていくことが圧倒的に多いのだ。

だから今みたいに事前にアポがない状態で来客があっても通されることはまずなかった。

それにも関わらずこんな短時間で許可が出るなんて本当にこの人は何者なんだろう。

同じ時間を過ごせば過ごすほど謎が増えていくばかりだ。

私があまりにも見ていたせいか彼と視線が重なってしまった。

「ん? 何? どうかした?」

だが彼は特に動じるわけでもなくまた優しく微笑む。

もしかすると私が何を考えているのか分かっていてはぐらかしているのかもしれない。

「……いえ、何でもないです」

私もあえて深く追及することはしなかった。

今何を聞いてもはっきりと答えてくれないような気がしたからだ。

「僕が何者か気になるかい?」

「………」

ならないと言ったら嘘になる。

この人が何者で、どうして私と楓さんの事を知っているのか。

それに初めて会った時から心に引っかかることもある。

「気になります。だけど……」

「だけど?」

「きっと今ははっきり教えてくれないような気がして。それになぜか分かりませんがあなたと初めて会った気がしないんです。もちろんさっき初めて会ったはずなんですけど、どこかで見たことのある目をしているって言うか……」

そう。

そのまっすぐに私を見てくる目に惹かれる。

前にも同じような瞳で私を見つめてきた人がいた。

「俺が誰かと似ている、とか?」

「いえ、きっと気のせいです。気にしないで下さい。すみません、突然変なことを言ってしまって」

会ったばかりの男の人におかしなことを言ってしまったと後悔した。

いきなりそんなことを言われても困らせるだけだというのに。

それでも彼は気にした様子はなかったが、どこか愉しげに私を見つめてきた。

「そう。でもあまりそういう台詞を他の男の前でしてはいけないよ。もしかして誘っているんじゃないかと勘違いされるからね」

「あ、私、そんなつもりは……」

「もちろん分かってるよ。安心して」

穏やかに微笑む表情の中に少しだけ別の顔が見えた、………気がする。



「さあ、着いたみたいだね」

彼の声にふと窓の外を見ればいつの間にか屋敷の前に到着していた。

そして静かに丁寧に私達の乗った車が止められるのだった。


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