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『由美、翔ける』
【スポーツ 官能小説】

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『由美、翔ける』-43



「恥ずかしい……」
「久しぶりだったからね」
 一児の母でありながら、お尻の穴で悶え狂った自分の姿を思い出し、由美は恥じらいに懊悩としている。そんな妻の体を抱き締める時矢の腕は、付き合いを始めたときと変わらない、優しさに満ち溢れていた。
 ちなみに、お尻の穴で交わった後も、いわゆる“通常のセックス”を三度、立て続けに行って、二人は今、休憩をしているところである。
「ママが望むなら、もっとするよ」
「パパのバカ……ん……」
 時矢の言葉を奪うように、由美は唇を重ね合わせた。
 そんな様子でしばらく睦みあっていた二人。軽いタッチを交えながら、寝物語を愉しんでいる、まったく仲睦まじい夫婦である。
「お祝いの手紙も、いっぱいきたよ。ほら」
「あ、すごい」
 ご無沙汰になっている旧友たちから、金メダルを祝うメールはたくさん届いていた。そして、それだけでなく、こうやって、葉書や手紙で送ってくれた人たちもいた。
「あっ……」
 今は、二人とも名字が変わっている桃子と桜子からも、祝福の言葉が届いていた。


 『由美、やったわね。あたしの“夢”も叶えてくれて、ほんと、ありがとう。ちょっと、恥ずかしいこと書くけど、アンタは、あたしの“誇り”だわ。アンタが世界で飛ぶ姿、すごいカッコよかったよ』


 『由美先輩、おめでとうございます! あたしの下の子、男の子なんだけど、テレビで由美先輩のことずっと応援してて、それで最近、バレーボールを始めたの! みんなでいつか一緒に、バレーボールやりましょうね!』


 この手紙を書いているそれぞれ二人の顔が想像できるぐらい、気持ちの篭もった文面で、由美は、目頭を熱くしながらそれを読んでいた。
「ママ、おめでとう」
「ありがとう、パパ」
 様々な思いが溢れた由美は、もう一度、夫にその身を寄せて、唇を重ね合わせた。
「パパ、ね……もう一回……」
「ああ。愛梨のためにも、ね」
 今の二人の目標は、娘に“きょうだい”をプレゼントすることである。
 再びベッドを揺らし始めたそんな二人の枕元には、金メダルを勝ち取った試合で、最後の得点を引き出した由美の、ジャンピング・トスのベストショットを撮った一枚が飾られていた。
 時矢が、その写真につけたタイトル。
 それは、“由美、翔ける”、と、なっていた…。 






 −『由美、翔ける』了−


 


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