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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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33 飛竜使いの資格-1


 まだ薄暗い早朝、カティヤは絶対無理をしないと医者に誓い、ようやく着替えの軍服を渡してもらった。
髪を後ろで一つに縛り、病衣からシャツとズボンの軍服へ、スリッパから軍靴に履き替えると、やっと調子が戻ってきた。
 一歩歩くごとに体中へ痛みが走るが、夜露に濡れた芝生を踏み、厩舎に急いだ。
 ナハトが気になって仕方ない。
 こんな時に傍にいてやれないで、何がパートナーだと、自分を叱咤する。

 早すぎる時間にも関わらず、城内はせわしない雰囲気に包まれていた。
 明るく陽気ないつもの賑わいとも違った。
 行き来する兵士や侍女、厨房の下働きから庭師の見習いまで、どこか落ち着かない様子でヒソヒソ囁きあい、何かを怖がっているように身をすくめている。
 すれちがいざま、小耳に挟んだ会話から、牢獄のある離塔で何か起きたらしい。

「あ!もう起きて良いんですか!?」

 目の前の小道を横切ろうとした竜騎士が、カティヤに気付いて駆け寄った。
 まだ少年の彼は一番の新入りで、騎士団の中で唯一カティヤより歳下だ。

「ああ。心配かけた……それより、どうしたんだ?」

 ジェラッド城の牢獄は、重罪人を一時的に収容するのが主で、滅多に使われない。今入っているのは、たった一人のはずだ。

「それが……」

 竜騎士は困ったように頭をかき、困惑と少しの脅えが籠もった声で囁く。

「牢に入っていたマウリが、魔獣に喰い殺されたらしいんです。酷い状態だそうで、見てきたヤツが吐きまくってました」

「なっ!?魔獣が入った!?」

 マウリがどんな無残な死を迎えても、カティヤは同情できない。
 百万回殺しても飽き足りない男だ。

 しかし、それほど凶悪な魔獣が城に入った事実は大問題だ。
 特に今は、建国祭に来ていた各国の使節団たちが、帰る事もできず逗留を続けている。

「門を飛び越えて、あっという間に逃げてしまったそうです。兵たちが城下を探していまずが……城下にはまるで被害がなく、兵たちもかすり傷一つ負っていません」

「あの男だけが殺されたのか……」

 本当は魔獣など存在せず、全てエリアスの見せた幻覚だと、カティヤは知る由もなかった。

「死者を悪くいうべきじゃないけど……俺は同情なんかしない!だって、アイツのせいで団長は……」

 思わずといった調子で憤慨し始めた竜騎士は、途中で我にかえったらしい。

「失礼しました、団長!!」

 竜騎士は敬礼し、急いで走り去っていく。
 気を取り直したカティヤも、再び厩舎にむかって急ぎ始めたが、ふと違和感に気付いて首をかしげた。

「……よほど動揺していたのかな?」



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