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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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25 非日常の歪み-3


 ***

「――アレシュさま?」

 エリアスの声に、アレシュはハッと我に返る。
 たった今、各使節団の代表達と朝食を軽く済ませ、エリアスと客室に戻った所だった。

「あ、ああ……聞いている」

 アレシュに用意された客室は、王宮本殿で最も見晴らしのよい部屋で、遠く市街地まではもちろん、パレードの準備をしている中庭もよく見えた。
 きちんと整地された広い地面に、塗料の桶がずらりと並び、飛竜たちを彩る作業が賑やかに行われている。
 脚立に登って刷毛を動かす者や、地面から指示を出す者。竜騎士たちの姿もある。
 さすがに人の顔は判別まできないが、ナハトはすぐわかる。その傍らに立つ小柄な竜騎士から、やっと視線を引き剥がす。

「リザードマンを操る者がいる可能性も、ユハ王はとっくに視野に入れていたようだな」

 冷ややかな視線を向ける側近に、ちゃんと耳はそっちに向けていたと証明した。
 貴賓客へ用意されるパレードの見物席は、市街地中心にある役所のテラスが定番だったが、今年は錬金術ギルドのバルコニーだそうだ。
 眺めの良さより、警備を重視しての変更なのは言うまでもない。
 国内のリザードマン急増に対し、あらゆる可能性を考慮し用心した結果だろう。
 リザードマンが襲うのは辺境の小さな集落や旅人ばかりで、ジェラッドやゼノのような大きな城砦都市は、まず襲わない。
 しかし『誰か』が不可能とされていたリザードマンの制御を可能にし、それを武器にジェラッドへ悪意を振りまこうとすれば、建国祭は格好の目標だ。

 先日、アレシュの報告を受け取ってすぐ、ストシェーダ王メルキオレは、即座にマウリを指名手配し、諸外国にも見つけ次第、即座に引き渡すよう厳重に要請した。
 ただし、リザードマンの研究成果については公表しなかった。

 もし公表してしまえば、逆にマウリを庇護し、リザードマンという力を得ようとする国が、必ず出てくる。
 ……とはいえ、外見と中身は大違いの抜け目ないユハ王は、諜者を駆使し何かと情報を得てはいるだろう。その他いくつかの国も、なにかしら情報や機会を探っているはず。
 全てを曝け出さないのはお互い様だ。

 政治はこれだからややこしいと、ビロード張りの安楽椅子に沈み、アレシュはため息をつく。
 全ての国が力をあわせ、全力でマウリを捜索すれば、もうとっくに見つかっているかもしれない。
 しかし、アレシュの血を悪用し主家を裏切ったマウリを絶対悪とするのは、あくまでストシェーダの主張だ。
 それより大陸行路の中心で大きな顔をしているストシェーダの方が、諸外国にとってはよほど目障りだろう。
 足元を掬う機会を虎視眈々と狙っている国は多く、彼らに弱みを見せることはできない。
 結果として足を引っ張りあいだ。
 ストシェーダはマウリを見つけられないし、ジェラッドも自国でリザードマンがふえ続ける理由を断定できない。

「国同士、お互いを信用し、手を取り合えばいいのにな……」

 つい、やりきれない思いが口をついた。

「ええ。たったそれだけの、とても簡単な事です」

 エリアスが冷たく静かに微笑む。
 昔から教育係も兼ねている側近は、時期国王たる教え子に、やんわりと釘を刺した。

「ですが、それが出来ないからこそ、世界はいくつもの国に分かれているのです。どうぞそれを、お心に止めてくださいませ」



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