〈囚獣・銭森麻里子〉-6
『よぉ、巨乳ちゃん久しぶり！……ところで、コイツが誰か分かるかなぁ？』
専務は鉄パイプを掴んで吊られた女性をクルリと回し、黒革のマスクに隠された顔を見せた。
美津紀の表情は困惑と動揺に歪み、今にも泣きだしそう……その長くて美しい肢体は、よく知っている女性に酷似しているからだ……。
(ち…違う……そんな筈ない……)
美津紀は頭の中に浮かぶ“女性”とは違うと叫んだ……自分にすら投げ飛ばされるような金髪鬼に遅れをとるはずがないし、こんな無様を晒す人ではない……だが、マスクで隠れていても分かる顎のラインや、文乃とお揃いの黒いスーツは……？
美津紀は立ち膝の姿勢で微動だに出来ず、その女性を見つめた。
『……分かんない？分かんないよねえ？クックック……』
専務は女性のマスクのファスナーを開け、まだ閉じたままの瞼を美津紀へと見せた……あの長い睫毛は美津紀の否定した人物と同じ……何度も味わってきた絶望が、またも牙を剥いた……。
『起きろ……起きろコラ！』
「…う……もぅぅ!?」
専務はマスク越しに頬を叩き、その女性を眠りから覚まさせた……瞼がピクピクと動き、そして目を開けた……その女性の眼球に飛び込んできたのは、天地逆さまな部屋の光景と、ウェディングドレスを着て首輪を付けられた妹の姿だった。
「うもぅッ!?おうぅぅぅ!!!」
麻里子は妹の姿に驚くと同時に、今の自分の状況に戸惑いながら辺りを見回した。
天井に下がるゴツゴツとした器具と、そこから下がる鎖と鉄パイプ。
それらが自分の手と脚の自由を奪い、吊り人形にしている事に愕然としながら、それでも麻里子は美津紀と文乃を餌食とした専務やサロトを睨みつけて喚いた。
『お姉ちゃんは「絶対助ける」って言ってたけど……こりゃ無理だよねえ？』
「う…うお!!むおぉぉッ!!!」
専務は麻里子が連結されている鉄パイプを掴むと、勢いよくグルグルと回した。
二本のパイプを繋ぐ二本の鎖は、左右のバランスを崩さない為の物。
天井とチェーンブロックの間の金具はベアリングが入っており、回転運動を妨げるものではない。
麻里子はパンティーを晒したままでクルクルと回り、道化のような振る舞いを強要されて笑い者となっていた。
(ふ、ふざけた真似をッ!!殺してやるッ!!殺してやるぅ!!!)