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野生の悪魔が現れたっ
【ファンタジー 官能小説】

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契約A-11

 悪魔は現世の魂と契約することで天界へ導く魂を確保する事が可能なのだが、その際、契約主の望みを叶えなければならないと魔界法で決まっている。
 望みの内容と、それに見合った罰を自分で考えなければならず、その罰が死に値する場合のみ呪殺術の使用が許されるのである。
 また、呪殺術を使わない程度の罰だった場合は、契約主の寿命が来るまで魂を導くことが出来ない。
 従って契約とは悪魔にとって面倒な事に他ならず、普通は避けて通る。
 契約することがあるとしても、既に亡くなっている霊と結ぶのが大半だ。
 霊とは、記憶の抹消の際に消しきれなかった怨念が、その恨みつらみを薄めるために霊界に送られた魂のことを指す。
 そのため霊は契約時の目的がハッキリしており、望みを叶えると直ぐに天界へ導く事が出来るのだ。
 ただし、それ故に多くの悪魔が霊界で働いていて、契約していない魂を探すのは割と難しい。
 そういった理由から現世の方へ注目し、病院や戦場で魂を導く機会を伺う悪魔もいるのである。
 因みに悪魔は、自然回復でしか魔力を回復することが出来ない。
 契約という作業が可能な悪魔は、契約主の望みを叶え得る多彩な技を駆使できるため、それを乱用させないためなのだ。
 このようにして魔族でも実績を積み終えた者は、新たな魂として現世へ転生するのである。

 ***

「天使が魔族に就職?」

「せやで? ちゃんと聞いとったんか?」

 修一は言葉を失う。
 オカルト界の常識を覆す内容に彼の頭は混乱気味だ。

「でもな、うちは特別な悪魔やねんっ」

「特別?」

 立ち上がり胸を張るクランに、修一は幾つもハテナを浮かべた。

「見て見てっ」

 クランの瞳が淡く輝く。
 途端、彼女の姿が増えていき、修一を取り囲んだ。

「これは……」

 修一はミルルが分身していったあの光景を思い出していた。
 しかしあの時とは違い、この幻は修一だけが見ている。
 彼の脳が幻影を見せられ、修一の目に投影していると言うことだ。
 従って、この沢山のクランに触れることは出来ないし、触れらることもない。

「あのミルルたちは、クランの術だったのか……」

「せや? うちが幻影見せたってん。今は触れへんけどな」

 クランは得意げに言いながら瞳を漆黒へ落ち着け、幻影を消した。

「幻影?」

 それはおかしい。
 何故なら幻影術は夢魔しか使えないはずなのだ。


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