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It's
【ラブコメ 官能小説】

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★★★★★-1

自然と目が覚めた。
時計を見ると7時を少し回ったところだった。
目の前では整った顔が寝息をたてて眠っている。
左手は昨日のまま。
仲良く指が絡み合っている。
「大好きだよ…陽向…」
昨日、初めて湊にそう言われた。
思い出すだけでドキドキしてしまう。
湊は滅多にそのような言葉を言わない。
だから、素直に嬉しかった。
右手で湊の髪をいじる。
「ん…」
感触に気付き、湊が目を覚ました。
「おはよ」
「おはよ。お前が先に起きてるなんて珍しいな」
「そんなことないよ」
「いつもねぼすけのクセに今日は早起きなんだな」
「ねぼすけじゃないし」
湊は、ははっと笑い、「まだ顔が眠たそう」と言って陽向の鼻を唇で挟んだ。
「くすぐったい」
「もう起きる?」
「ううん。まだ寝たい」
「休みだし、もーちょい寝るか」
「うん」
身体を抱き寄せられる。
湊の温かさに包まれ、陽向は幸せな眠りに落ちた。

再び目を覚ました時には、隣に湊はいなかった。
寝ぼけ眼をこすりながらリビングへ向かうと、湊がソファーに座ってコーヒーを飲みながらバンジョーを弾いていた。
「あ、バンジョーだ!」
「おー。よく寝てたな」
陽向は湊の隣に座り、奏でられる心地良い旋律に耳を傾けた。
「湊が曲作ってるの?」
「そ」
森の中にいるような感覚だ。
しばらく陽向はその音楽を聞いていた。
「新曲?」
「全然。テキトー。つーか、お前歌詞書いてんだろ?」
「そーだよ。…あっ!!!」
陽向は、大変なことを思い出した。
そういえば今日は…。
「どーした?」
「今日スタジオだ!やばいやばいやばい!」
「何時からよ?」
「1時!」
時計に目をやると、もう12時半だった。
陽向はあたふたしながらシャワールームに駆け込んだ。
「そんな大事な予定を何で忘れてるかねー」
湊はケラケラ笑って再びバンジョーを掻き鳴らした。
バンジョーを持ち直すと、リビングのドアがバンッ!と音を立てて開いた。
陽向が部屋をバタバタと駆け回る。
「どーした?」
「服持ってくの忘れたの」
「ドジっ子だな」
陽向は、はは…と笑ってソファーの下に散らばった服を引っ掴み、再びシャワールームに戻って行った。

湊の家からスタジオまではそれほど遠くはない。
徒歩十分のところを、陽向は全速力で走り五分で到着した。
予約していた部屋のドアを開けると、もう既に皆揃っていた。
「ごっ…ごめ…」
肩で息をしながら三人に謝る。
「また遅刻かよー。寝坊?」
大介がニヤニヤ顔を更にニヤニヤさせて問う。
「ね…寝坊って…いうか……とりあえず…ごめん…」
陽向は荷物を隅に置き、「はぁ…疲れた…」と言って床に座り込んだ。
三人に笑われながら、いそいそと準備する。
「陽向、来週のライブ終わったら8月まで出れないんだっけ?」
陽向がマイクの調節をしていると、洋平が言った。
「あ、うん。実習始まっちゃうからさ…」
来月の半ばから実習が始まる。
終わるのは7月の下旬だ。
今月のライブが終わってしまえば、実習に向けて勉強モードに突入しなければならない。
「はぁー。そっかー…。それまでライブはお預けかー」
海斗が寂しそうに言う。
「あたしだってライブやりたいよ。でも、8月のライブを楽しみに実習頑張る!」
「だな!っしゃー!じゃ、今日も頑張りますかー!」
大介の言葉で、みんなで気を引き締める。
曲が始まる。
なんだかいつもより一体感を感じる。
自然とリズムが身体の中に入り込んでくる。
歌と楽器がまるでひとつのかたまりのような感じ…。
「今の、めっちゃ良かった!」
曲が終わった時、大介が驚いたような顔をして言った。
「俺も思った!」
海斗と洋平が声を揃える。
「今の感じでライブできたらいーな。ま、音は多少変わるかもだけど、リズムは崩さないよーにな」
「はーい」
みんなが同じ返事をしたので、どかっと笑いが起こった。
楽しくて、それでいてワクワクした気持ちでいっぱいになる。
早くライブがしたい。
陽向はひとつの区切りとなるライブを心から楽しみにしていた。

20時。
スタジオから出てみんなと別れを告げた時、湊からタイミングよく電話がかかってきた。
「はーい。どーしたの?」
『練習終わった?』
「終わったよ」
『俺もバイト終わった』
「お疲れ。混んだ?」
『めちゃくちゃ暇だった。早上がり』
「あはは」
くだらない会話をしながら家まで歩く。
近くの公園にさしかかり、人気もまばらになってきた。
いつも帰る時は、この公園を通り抜けている。
『もうそろそろ家?』
「うん、今近くの公園」
『んじゃ、そろそろですね』
公園の出口にたどり着いた時、「おかえり」と頭を叩かれた。
「わっ!あー…もー。びっくりさせないでよー…」
湊が満面の笑みで陽向を見る。
「びっくりした?」
「したよー!なんでこんなとこにいんの?」
「早上がりしたからヒマだったんで」
湊はポケットに左手を突っ込み、空いた方の手で陽向の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
大きな手のひらで撫でられると、胸がキュンとなる。
「どっかご飯食べ行く?」
「お前の手料理が食いてーな」
「何食べたい?」
「んー…」
湊は少し考えた後「オムライス」と言って歩き出した。
陽向もチョロチョロと後を追いかける。
「オムライスすきなの?」
「うん」
「あははっ!子供みたい!」
「おめーに言われたくねーな」
「なんで」
「顔も背も何もかもガキンチョだから」
「ガキじゃないしっ!」
マンションのドアをくぐり、エレベーターに乗る。
ドアが閉まると同時に、湊にちゅっとキスをされた。


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